差別について社会学者にインタビューした第2弾。前回(7月3日号)は『何が差別なのか』を聞き、今回は『差別のない社会とは』について解説してもらった。
――差別はなくならないのですか。
「社会学的にいうと、差別があるかないかは、その行為や制度そのものではなく、社会の見方によって決まります。ということは、『差別のない社会』というのは、何が差別で何が差別でないかを判断する基準(規範や価値)が存在しないということ、つまり『ルールも秩序もない社会』を意味します。社会が判断できなければ、差別はそれとして認識されず、どんな行為も許されてしまう。差別自体は許されませんが、差別か差別でないかを判断できない社会も決してよいとは言えません」
――差別のない世界はありえないのですか。
「社会学という学問を通して考えると、『差別のない社会は望ましくない』という逆説的な結論に至りますね。“差別がある”ということは、“それは許されない行為だ”と判断できる規範があるということですから。感情的には差別がない方がよいのですが、社会のしくみとしては、差別がなくなることも怖い気がします。物事を判断できて何が差別を同定できる社会がよいのか、それとも、物事を判断できず何が差別かが分からない社会がよいのか。いずれにせよ、社会の判断がはたらく限りは、『差別のない世界はありえない』ことになります」
――先生は前回のインタビューで、『差別か、差別でないかという線引きは、ある社会や時代によって変わる』とおっしゃいました。
「そうですね。その線引きが変わったから、川崎市で『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例』ができ、全面施行されたのではないでしょうか。ヘイトスピーチをはじめとする差別行為は許されず、是正しなければならないという考えが、今回の条例につながった。川崎市民がそういう判断をした証だと、わたしは思います。外国籍住民を含め、その地域に暮らす人びとが、差別についてどのように考えるかで、差別をめぐる基準は変わってきます。同じことは過去にも繰り返し行われてきました。市民が社会に何を期待し、社会に対してどのようにかかわるのか。望ましい社会の実現をめざす意識と行動によって、何が差別で何が差別でないかが決まっていくのです」
※次回は『差別と区別』についてお聞きします。麻生区編集室では、人権、多様性などをテーマにした特集記事を不定期で掲載します。
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