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特別インタビュー 差別と区別、そしてこれから 和光大学現代社会学科 挽地康彦教授に聞く【3】

社会

掲載号:2020年7月17日号

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挽地康彦教授(和光大学現代人間学部 現代社会学科長)
挽地康彦教授(和光大学現代人間学部 現代社会学科長)

 差別について社会学者にインタビューした第3弾。前回(7月10日号)は『差別のない社会とは』について聞き、今回は『差別と区別の違い』について解説してもらった。 【最終回】

 ――自己肯定するためなのか、「これは差別ではなく区別だ」と主張する人がいます。差別と区別の違いは何ですか。

 「差別と区別は表記も似てますし、違いをつくる意味では共通してます。しかし差別には”利害”が絡みますので、まずその分け方が恣意的なこと、つまり区分自体が歪められているのが特徴の一つです。区別の関係はあくまで並列で等価なのですが、差別の場合は利益/不利益、優位/劣位、支配/被支配といった非対称で不平等な関係性を前提にしています。差別はその関係性を自明視し、自然な事として固定化しようとする動きの中で現れるのです」

――では、差別が明らかにある社会で、それを区別や違いと表現することをどう思いますか。

 「”差別ではなく区別だ”と主張することは、差別する側の加害性を意図的に隠蔽することを意味します。区別は等価で中立ですから、差別を区別に置き換えることは、差別する側が自らの特権を正当化し、相手への攻撃を合理的だとみなすことになる。また、重要なのは、それによって隠蔽されるのは加害性だけでなく“被害性”も同じだということです。差別を区別と表現した途端に、被差別者の犠牲も看過されてしまいます。それは、相手の苦痛や苦悩に対する敏感さが失われていくことにつながっていく。ただ、そうした他者理解よりも自己の利益や立場が優先されるために、区別などと表現するのでしょう」

――利益、特権を得られない、または関係ないと思われる人も差別を区別などと表現しますよね。

 「たしかに、そうした利害に絡まない人もまた、差別を区別や違いという言葉に置き換えて認識することがあります。ただし、直接的な利害関係がなくても、自分がマジョリティ(多数派)の側にいること、そこで得られている利益や安心感があること、そしてそれらを失いたくないという感情がはたらいているのではないでしょうか」

――差別の形態は今後どうなっていくと思いますか。

 「日本は数十年前から、『多文化共生』という旗印を掲げてきました。けれども、多民族・多文化社会の”現実”に対して、官民一体となって真剣に取り組んできたかといえば、そうは思えません。ヘイトスピーチを含む各種の差別行為に対して、『多文化共生』は政策として何ら成果をあげることなく、対峙することすらしてこなかった。その結果、ヘイトの何が問題なのかが分からない人たちが一定程度存在することにつながった、と考えます。差別が今後どのように現れ、問題視されていくのか。それは市民社会に委ねられています。今回の川崎市のヘイト規制条例は、その契機になるのかもしれません。川崎市がこれまで培ってきた経験、ヘイトの犠牲になった人びとの苦悩、反ヘイトに賛同した市民や地元を愛し守ろうとした人たちの思い、それらが結集した条例なのだとわたしは思います。条例ができるまでの過程が重要であり、さまざまな背景があったからこそ条例が成立した。日本社会がその部分をどう理解するかが今後の課題でしょう。条例の中身を啓蒙することだけが重要ではなく、成立の背景にある川崎市民の存在と思いを伝えていくことが、この条例の役割だと考えます」

 ──長時間、ありがとうございました。

 麻生区区編集室では、人権、多様性などをテーマにした特集記事を不定期で掲載します。ご意見や情報など教えてください。【メール】asao@townnews.co.jp

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