大師稲荷神社(中瀬/中村博帝宮司)に10月26日、同神社の祭神(ご神体)である「十一面観音」の石像が奉納された。同神社の社殿に十一面観音像が祀られるのは、明治期の神仏分離以来、約140年ぶり。来年の初詣シーズンには、一般公開を予定している。
大師稲荷神社の創建は平安時代後期の1128年頃。川崎に暮らしていた武士・平間兼乗が、海から「十一面観音像」を引き上げ、祠(現在の同神社)に祀ったという、川崎大師平間寺(大師町)と似通った創建伝説(※)が伝承されている。
同神社に代々伝わる伝承によると1871年(明治4年)、当時の政府による神仏分離令で「ご神体を仏像とすること」を禁じられたため、社殿に安置していた十一面観音像を川崎大師平間寺(大師町)に譲渡。像はその後、戦火で焼失したとされる。大師稲荷に新たな十一面観音像が奉納されることのないまま、現在に至っていた。
事情を知る同神社の崇敬者が今夏、高さ約125cm、白玉石製の十一面観音像を同神社に寄贈。10月26日に社殿内に奉納した。十一面観音は、11の顔を持ち、下界の全ての方角を見渡す観音菩薩の変化身。病気の治癒など、10種類の現世利益をもたらすとされる。
県神社庁によると、仏教の信仰対象である観音像を神社の祭神として祀っている例は、県内では稀。中村宮司は「海外では宗教対立から戦争も起きている。相互理解の一つの形を、観音像の安置で示せれば」と話す。正月には希望者を対象に、像を一般公開する予定。
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