高潮堤防の補強整備が進められている多摩川殿町地区で第1期工事が先月末に完了し、天端部分の舗装道路の通行が再開された。工事が行われた区間は区内有数の桜の名所として知られるが、当初は桜並木の伐採も検討されていた。市民グループの要望を受け、国交省は意向を反映。桜並木の保存や住民のプライバシーに配慮した堤防を整備した。「我々の思いを尊重してくれた。感謝したい」と住民グループは喜ぶ。
工事が行われたのは、殿町3丁目のJR貨物線トンネル付近から上流約300メートルの区間。
国交省では東日本大震災を受け、高潮堤防の高さ、幅、構造の危険度が高いと判断された箇所の補強工事を進めている。殿町地区は堤防の高さを約1メートル上げる必要性が指摘されていた。
河川堤防は、河川が流れている側を「堤外」、住宅が建つ側を「堤内」と呼ぶ。また、堤防の頂部を「天端(てんば)」、斜面を「法面(のりめん)」と名付けている。
殿町堤防は当初、盛土による工事で天端の高さを上げ、その幅を6メートルに拡幅しようと計画。法面も盛土による補強整備を検討していた。
工事は13年10月中旬から着工される予定だったが、計画を知った住民の中から「桜並木を伐採することになる」との声が上がった。桜並木は川崎大師ロータリークラブが植え、今では区内有数の桜の名所となっているという。
当初計画案ではまた、堤防から家の中が丸見えになってしまう恐れがある点も住民から指摘された。こうした状況から、住民有志は市民グループ「多摩川下流殿町1丁目、2・3丁目対策協議会」(寺尾巌委員長)を結成し、国交省に計画変更の要望を行った。「大正時代の多摩川改修工事の際、我々の先祖はここの土地を買い上げられてしまった歴史がある。今回の計画が持ち上がった際、我々はまた我慢を強いられた生活をしなければならないのかとの思いを抱いた。50年、100年先地域住民にとって良い堤防を造ってもらいたいとの思いで要望を出した」。副委員長を務める近藤正美さんは働きかけを行った背景について、こう説明した。
完成した堤防は天端の河川側の端の部分である法肩に幅80センチ、高さ約1メートルのパラペットと呼ばれる波返しを設置することによって天端の高さを抑え、堤防として必要な機能は確保しつつ、桜並木の保全や堤防に接する住宅のプライバシーにも配慮した。
寺尾委員長は「意向を尊重してくれたことは大変ありがたい。感謝している」と語った。
多摩川殿町地区の高潮堤防工事は残る区間でも予定されており、工事連絡委員を務める小泉二三男さんは「これからも見届けたい」と話す。
川崎区・幸区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|