日本の名高い山を己の力のみで踏破するプロジェクト「ひと筆書き〜グレート トラバーズ〜」。アドベンチャーレースを生業とする「プロアドベンチャーレーサー」として活躍する市内在住の田中陽希さん(35)は、日本三百名山、その頂を見据えている――。
田中さんは埼玉生まれで、6歳の頃に北海道富良野市に移住。少年時代は雪山を駆けるクロスカントリースキーに明け暮れた。将来は体育教師をめざしていたが、大学卒業後に「アドベンチャーレース」に出合ったことで人生は一変した。
アドベンチャーレースとは、大自然の中で地図などを頼りに男女混成チームでゴールをめざすレース。大会は数日間に及ぶこともあり、世界で最も過酷な競技とも呼ばれる。全力でゴールをめざし、道なき道を駆け抜ける競技の魅力にとりつかれた田中さんは、プロアドベンチャーレーサーとして「冒険」の道へ進むことを決意。国内外の大会で好成績を収める。
契機は登山での高揚感
プロアドベンチャーレーサーとして活躍する傍ら、「ひと筆書きプロジェクト」を始めるきっかけとなったのは29歳のとき。祖父が暮らす九州へ旅行に行った際、思い至り日本百名山のうちの3座、阿蘇山・九重山(くじゅうさん)・祖母山(そぼさん)を登った。常に時間を意識するアドベンチャーレースに身を置く中で、のんびりと景色を楽しみながらの登山は久しぶりで心から「楽しい」と感じた。その高揚感が忘れられず、2014年、車やバスなどを使わず徒歩やシーカヤックのみで「日本百名山」を踏破する「ひと筆書きプロジェクト」の第1弾を個人で開始。222日かけて全ての山の縦断を成功させた。翌年には「二百名山」の登頂も完遂した。
2度のプロジェクトを成功させた田中さんだが、振り返ると「楽しむ余裕を忘れていた」と話す。スケジュールを重視するあまり、成功させることだけに夢中になっていたという。そこで、改めて山の景色や人々とのふれあいなどに楽しみを見出す集大成のプロジェクトの実現を決意。昨年元日、鹿児島県屋久島から第3弾となる新たなプロジェクトを開始した。現在、約300座中126座目となる群馬県赤城山まで登頂。田中さんはプロジェクトの醍醐味を「時間に追われる時代だからこそ、自分の足で時間をかけて歩くことに価値を見出している」と話す。
旅の楽しみは道中の絶景だけではなく、人との出会いにもある。「道が変われば人が変わる」。地域の人々と交流し、各地の食文化に触れることも大切にしている。
「どの山にも魅力がある」
登山には常に危険が付きまとうもの。だが、自然と危険は隣り合わせ、と考える田中さんは必要以上の恐れを感じていない。険しい山道でも常に笑顔は絶やさない。「どの山が一番印象的ですかと聞かれるが、山に優劣はつけない。どの山にも魅力があり、それを見つけるようにしているので全てに思い入れがある」
今後は20年を目途に三百名山踏破をめざす田中さん。プロジェクト終了後はアドベンチャーレースの世界に専念する予定だ。なお、田中さんの活動は自身のホームページや放送中のNHK「グレート トラバーズ」などでも見ることができる。
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