相模原市緑区在住の大橋美沙さん(19)が制作した自身の学習障害体験を綴った絵本『かなわね』が7月15日、文芸社から刊行された。絵本の帯には、「本当なら、かな『は』ね、となるはずの、この絵本のタイトル。小学生の頃に「は」と「わ」の区別がつけられなくて、うまく書けなかった著者の思いが詰まっています」とある。
書いても覚えられない
大橋家の次女として生まれた美沙さん。ノートいっぱいに漢字練習するほどの頑張り屋だったが、広田小2年のときの国語のテストは100点満点中10点。書いても書いても覚えられない。「なんでこんなにできないんだろう」。娘からそう打ち明けられた母親の美穂さんは、市外の教育支援センターに相談した。幼少期から指示が入りにくかったことや集団生活の苦手さなどから、知的発達に遅れはないものの、読み書きや計算などの習得と使用に著しい困難を示す「学習障害」だと考えられた。美穂さんは「当時、座っていられないADHD(注意欠陥・多動性障害)などの子は認知され始めていたが、美沙のように外見からわかりにくい子は支援の手から漏れがちだった。勉強ができないことで自己肯定感が低く、友人間で嫌な思いもしたみたい」と振り返る。
周りと比べてできなかったことが自分の努力不足ではないと知った美沙さんは、中学校では支援級、高校は通信制を選んだ。高校に入って美術系の授業を積極的にとるようになり、現在は特技を生かして横浜の美術大学に通う2年生になった。
課題がきっかけ
美沙さんが高2のときに課題で描いたのがこの絵本だ。学習障害がある女の子「かなちゃん」の視点で、学校生活のやりにくさや友人関係で悩んだことを丁寧なタッチの絵で描いている。「自分の苦手なこと、困っていることを本にしてみたいと前から思っていた。授業で絵本を描いてといわれたとき、同じ悩みを持つ誰かに届けたいと思った」と美沙さん。提出した課題原稿を昨年冊子版として印刷した際は、小学校のときの恩師の尽力で市内ほぼ全部の小学校の図書室に配架された。そしてこの度、「一度はきちんと製本したい」と自費出版することに。でき上がった本を前に照れくさそうな笑みを浮かべる美沙さん。将来については「まだ考え中です」だそうだ。
B5判、36頁。1300円(税別)。問い合わせや購入は、インターネットから「かなわね製作委員会(NEW)」で検索。
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