新型コロナウイルス感染症に多くの人が影響を受ける中、毎日地元を走り続けるJR横浜線に向かってエールを送る少年がいる。沿線に立っているのは、清新小学校に通う小俣慶人くん(10)。踏切近くまで自転車で乗り付けては、「コロナに負けるな!横浜線」と書かれた手製のプラカードを掲げている。
自粛がきっかけに
1歳の頃から電車を見ることが好き。普段から休日には電車に乗るためだけに、東京・埼玉・千葉を両親と一緒に巡っている。とりわけ大の横浜線ファンで、幼稚園児の時には特技のピアノで「はしる横浜線」という曲名で作詞作曲したほど。今年の春休みも同線の車両に乗ることを楽しみにしていたが、新型コロナの流行により、気軽に電車に乗ることが叶わなくなってしまった。
緊急事態宣言の発令で自粛が広がり、いよいよ大好きな電車を眺めるだけの日々に。悶々とする中、自分にできることを考えた末に芽生えたのは、横浜線を支えたいという思い。そこで、「せっかく見に行くんだったら、毎日運行している横浜線を応援しよう」と沿線に立つことを思い立った。早速、自宅でプラカード作りに取り掛かり、5月10日から応援をスタートした。
休校中に時間を見つけては自転車を走らせ、自宅近くの高砂踏切や小山踏切、時には矢部踏切まで応援して回った。電車が通らない間は線路内の信号機の観察や、踏切の仕組みを考えるなど、待ち時間も電車のことで想像をふくらませる。ほぼ毎日通ううちに「この信号の色だと何番線に入るのか、大体わかっちゃった」と得意げ。6月の学校再開から夏休み中も沿線に立ち続け、楽しみながら応援していた。
地域と交流も
踏切近くでプラカードを掲げていると、地域の人たちから声を掛けられることも多い。踏切近くの飲食店の店員から横浜線の限定グッズをプレゼントされたり、通りがかりの人たちからは「新型コロナで暗いニュースが多い中、心温まる。ありがとう」と感謝されることもあった。「周りの色んな人に声をかけられてうれしい」と笑顔。今後は「電車を待つ間にゴミ拾いしたい」と、地域貢献活動にも関心を寄せる。
横浜線に思い届く
応援の声は同線の運行に携わる人たちに届き、プラカードに気付いた乗務員が警笛や敬礼で応えてくれるように。その後、同線乗務員が所属する組織「JR相模原運輸区」でも話題になり、感謝の気持ちを伝えようと「『コロナに負けるな!横浜線』応援ありがとうプロジェクト」を企画。その一環として、8月には乗務員らから寄せられたメッセージと横浜線の写真が詰まったアルバムが、現役の運転士や車掌から贈られた。思いがけないプレゼントに「ますます応援したい」と思いを強くし、現在新たに「コロナを超えて走れ横浜線」と収束を願ったプラカードを作製。これからもさらなる応援に向け奮闘するつもりだ。
将来は「横浜線を安全に運行させる優しい車掌さんになりたい」。同乗務員との交流を経て、その夢がより一層明確になった今、実現させるために一番頑張っていることは日々の勉強だ。「鉄道のことももっと知りたい」と笑顔がはじけた。
大好きな横浜線とともに、打倒コロナを胸に、これからも、元気いっぱいに沿線に立ち続ける。