世界が抱えるさまざまな問題を解決するために国連で定められた国際目標「SDGs」(持続可能な開発目標)。元旦号から引き続き、相模原市出身のトップモデルで、2019年から消費者庁エシカルライフスタイルSDGsアンバサダーとして活動する冨永愛さんのインタビューを紹介する。
―ファッション業界にも、環境や人権などの問題に注目されている人は多いのですか。
「そうですね。注目せざるを得ないと思います。コロナ禍で言うならば、リアルな交流ができなくなってしまいましたよね。パーティーだったりイベントだったり、ランウェイだったり。そういうリアルな表現ができない以上、デジタルで世界観を発表、表現していかなければならない。今までブランドの表現の仕方というのはランウェイだったりイベントだったり、限られていたと思うんです。コロナ禍では多様な表現をせざるを得ない。リアルができないなら、どうブランドの世界観を表現していくかと考えた末に、短編映画を作ったりデジタル上でプレゼンをしたり、そうやってより多様な表現の仕方を模索しているのだと思います。ある意味ではすごく広がりができたと思うんですよ。そう考えると今、ブランドや企業の方たちがどうやって売っていこうかと、ものすごく考えているんだと思うんです。それは逆に考えるとこれからの未来に対しては、良いことなのかもしれないですね」
―その道筋の一つとしてSDGsがあるということでしょうか。
「そうですね。SDGsというのは理念でありビジネスとしても成り立たせないといけないことだと思うので、両立しながらやっていくことになるんでしょうね」
―企業としてはやはりビジネスにつながらないと取り組みにはつながっていかないと。
「はい。私自身は、ビジネスをきちんと考えることは良いと思うんです。ビジネスにしていかないとSDGsというものがちゃんと私たちの生活の歯車として回っていかなくなってしまうと思うので、そこをうまく回していくにはビジネスとしても成り立たせていかないとならないと思います」
―ファッション産業では、どのようなビジネスへのつながりが考えられますか。
「一つ目はやはりイメージ戦略ですよね。ファッションに限らずどんな企業でもそうだと思いますが。これから先、一般の方たちも(企業が)どんな活動をしているかというのはすごく注目してくると思うので。そういった意味では大事なことだと思いますし、さらに言うと、それがちゃんと消費者にわかるように透明化されることも重要になりますよね」
地味でも大きな変化に
―冨永さんが普段から実践されているSDGsとは何でしょうか。
「細かく言えば、マイボトルやマイバッグを持ち歩くというのが基本にあって。あとは冷蔵庫の中身を把握してから買い物に行って、できるだけ食品ロスを減らすとか、プラスチックをなるべく減らす、電気をこまめに消す、水を使いすぎない。地味かもしれませんが、多くの人が気にすれば大きな変化になりますよね。ファッションで言うとブランドの背景を知って買い物したりとか、服だけじゃなく物を買うときは長く使えることを意識してチョイスしています」
―息子さんともそういう会話はあるのですか。
「ありますよ。こういった物が今良いよとか、これ知ってる?とか、よく話はします」
―息子さんからの提案もあるのですか。
「息子に限らず若い子たち、10代の子たちって、小さい頃から学校でSDGsじゃなくても環境問題を勉強してきているし、30、40代の人たちの子どもの頃よりも、環境問題ってかなり現実的なものになってきている。そういった勉強をしてきているんですよね。SDGsの活動を通して、学生さんたちとの関わりもありますが、もしかしたら大人より子どもの方が意識は高いのかもしれないと思うことは多々あります。日本のSDGs認知度は2015年には約10%だったのが、最近では約30%になっている。それでも少ないとは思いますが、5年前よりは増えてきていますね」
めざすは完全な循環社会
―日本のSDGsの取り組みは遅れているのでしょうか。
「ビニール袋が有料化されたのは最近で、それだけでも海外のほうが早かったし、やっぱり大きく動き出すのが遅いというか、決定に時間がかかるんでしょうね。これは私の意見ですが、少子化問題が前から問題視されているのにもかかわらず、不妊治療の助成拡充はやっと今年から。もう少し早くからやってほしかったと思う人はたくさんいると思います。国が判断するのに時間がかかるのであれば、地域や都道府県の単位で決断できることをやっていくのが早いのではないかと思ってしまいますよね。相模原市は、再生可能素材を使った簡易宅配ボックスを配布していたり、割と進んでいると思います。自然が多い地域なのでそういうことへの関心が高いのだと思いますが、ゴミ問題にしても、まず家庭での分別が大事だと思いますが、果たしてプラスチックがどれだけリサイクルされているかという疑問もあります。プラじゃないと成り立たない素材もあると思うので、プラはプラで私たちの生活に存在していて良いと思うのですが、要は新しくプラを生産するのではなく、全て循環させてリサイクルしていくシステムさえ確立されればいいと私は思うのです。完全なる循環社会がめざせたらすばらしいですよね」
女性が選択できる社会
―続いて、「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)をはじめとする複数のSDGs項目にも関わることですが、女性の社会進出について日本の現状と、めざすべき姿についてお考えを聞かせてください。
「日本は男女平等指数が先進国でもかなり低いので、これから少子化で人口が減っていくとなると、かなり重要な課題になってくると思います。じゃあ、平等にしていくのであれば何が問題かというと、女性のキャリア形成において、出産したら子どもを預ける場所が無い、出産したらキャリアを積んでいけないと、まずその問題に直面するわけです。そもそも、女性が活躍する場が少ないというのであれば、その席を確保しなければいけないと思います。女性自身も自分がそうなれる、女性でもリーダーになれるっていうことを、より自覚していける社会があるべきですよね。もちろんすべての女性がそうでなければならないというわけではなく、活躍したいと思っている女性に対して選択できる社会であってほしいと思います。選択ができないと、そもそもどうにもならないですね。子どもを社会全体できちんと育てていくことができるようにならないと難しい事なのかもしれません」
潜在能力高い相模原
―世界的に活躍されている冨永さんから見て、SDGsを踏まえて相模原のポテンシャルというのはどうお考えですか。
「ポテンシャルは高いと思います。大好きですよ、相模原。リニアが開通することも大きいですが、将来人が集まる場所になると思います。出入りが多くなると、もちろんゴミも増えていく、そういったところで相模原がSDGsに注力しているということは知っています。川も山もあり、というのは大きな魅力ですし強みだと思うんですよね。これから先、都心に住むということが重要じゃなくなってくると思うので、そう考えると相模原は都心に近いし、自然が豊かで子育てをしやすい環境ですから、未来は明るいように思います。相模原市には大きな未来を見据えて計画していってもらいたいなと思っています」
SDGsまず知ること
―SDGs実現に向けて根本的に必要なことは何でしょうか。
「SDGsとは何なのかをまず知ることだと思います。17項目あって、そこからもっと細かく分かれていますが、それが全部個人のことではなく、企業に向けた目標だったりしますが、全て実行しようとすると大変なことなので、自分が気になるところ、身近なところから着手していくのがいいんじゃないかなと思っています」
―そもそも興味がない人に対しては、どんなきっかけがあれば良いのでしょうか。
「そうですね。興味がない人は必ずいるので、少しでも興味がある人の行動を深くしていくほうがより効果があるかなと思います。でも、例えば私の友人が目の前でペットボトルをポイ捨てしたとしたら注意しますよね。あとは、他愛のないお友達との会話の中で『これ知ってる?』と、話をするだけでも、そこからの広がりがあると思うので実践すると良いと思います。相模川ってこんな生物がいるんだよとか。以前、相模川の生態系を調べる番組に出演させていただきましたが、捨てられた外来種が在来種の存在を脅かしていることを知りました。知ることっていうのはすごく大事なことなんですよね。まず知ること、その次に自分がどういうことができるのか、今の生活がどのような影響を及ぼしているのか考えること。そして、行動すること。この3段階が変化には必要だと思います」
―2021年からすぐに始められるおすすめの取り組みはありますか。
「新年なので、今までやってなかったことを一つやるというのは良いかもしれないですね。皆さんが家庭でできること。生ゴミコンポストとか。今年はゴミ問題をなんとかしたいですね。なかなかプラが減らなくて。商店街での買い物は量り売りするのでプラは少ないけれど、時間が無いとなかなかできない。スーパーでも過剰包装が減ればいいですね。そこが難題かなと。私は、マイボトルを持つようになってからペットボトルのゴミはかなり減りましたね。マイボトルを持っていると買う行為がなくなるので、今ではほとんどペットボトルのゴミを出さなくなりました。まずはマイボトルを持つということから始めても良いと思いますよ」
皆ですばらしいまちに
―市民に向けて、メッセージをお願いします。
「私は相模原で育って、相模原の豊かな環境や人間関係が自分の根底にあるので、いつでも帰りたい場所でもあるし、ゆくゆくはまた住みたいと思っている場所なのですが、これから先の未来、相模原市がきっと注目される場所になると思うんです。なので今、相模原にいる方たち一人ひとりが、未来の相模原をつくっていくんだということを少しでも考えることができたら、きっと全国に無いすばらしいまちになると思っています。みんなですばらしいまちにしていきましょう」
―どうもありがとうございました。
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