今年は丑年--。牛は生乳を提供し、見た目の愛らしさから人々に癒しを与えてくれる存在となっているが、淵野辺の麻布大学では、そんな牛たちに関する研究が進んでいる。その1つが、獣医学部・河合一洋教授らが取り組む、乳牛の乳房炎を低減させるための研究だ。
およそ3割の乳牛がかかると言われるこの病気は、人が乳を搾る際や牛舎が不衛生であることなどから、悪性の細菌が乳房に侵入し起こる病気で、炎症を起こしてしまうと乳房が赤く腫れあがり、牛は乳を出せなくなってしまう。その経済的損失は国内全体で年間800億円にも上るのだという。
19年に「窓口」
そんな病気に対し、河合教授らは炎症の発生原因の分析を進め、治療や予防法の確立を急ぐ。
2019年には、他大学や企業、国の研究機関などと情報を共有化するための窓口となる「麻布大学乳房炎リサーチセンター」を大学内に設立。それまでつながりが希薄だった関係機関を結び、乳房炎によって生乳の出荷量が落ちた酪農家の相談窓口としての役割を担う。
河合教授は「酪農家さんたちの力になりたい。牛の数が年々増加するのに伴い、症状を引き起こす要因が多岐に渡るようになり全てに適用できる解決策はないが、少しでも発生を低減させるための情報を発信していきたいと思う」と話す。
一方で、淵野辺で学んだ学生たちが卒業後、その知識を社会で生かしていけるように指導していきたいとも語っている。
身近でも
河合教授の牛に関する研究は我々の身近なところでも生かされている。
市内にも店舗のある、大手コーヒーチェーン「スターバックス」は河合教授らのデータを元に、コーヒーの豆かすを再活用する取り組みを進めている。関東や関西の一部店舗で出た豆かすを乳牛の飼料にして、それを食べた牛から採れたミルクを一部店舗で使用しているのだ。
河合教授の研究によると、コーヒーの豆かすは、抗酸化物質であるポリフェノールなどが大量に含まれており、それを食べた乳牛は酸化ストレスが減少し、免疫力が上がることなどから、良質な生乳を出してくれるようになるのだという。
河合教授は「私もこのミルクを飲んだが、おいしかった。今後も淵野辺を拠点に、牛たちを救う研究を進めていきたいと思います」と話している。
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