さがみはら中央区 経済
公開日:2023.11.30
中央区在住 松井利夫さん 神奈川文化賞受賞者の横顔【1】
起業家育成、地方創生に貢献
アルプス技研創業者・最高顧問
第72回神奈川文化賞・スポーツ賞がこのほど発表され、受賞者6人のうち市内からは文化賞の芸術部門で現代美術家の上條陽子さん(南区在住・86)、産業部門で株式会社アルプス技研(横浜市)の創業者で最高顧問の松井利夫さん(中央区在住・80)が選ばれた。松井さんは起業家育成や地方創生に貢献したことが評価された。
メカトロニクス派遣・請負業を確立
松井さんは1943年、新潟県南魚沼市生まれ。高校を卒業し上京。工場で働きながら夜学の専門学校で電気や機械について学んだ。68年、25歳のとき、相模原市で機械・電気工学を融合した「機電一体(メカトロニクス)」の設計業を創業。71年に有限会社アルプス技研を設立し、81年には株式会社アルプス技研とした。設計技術者の派遣・請負業を確立。「企業は人なり」「人が末来」と、人と人との心のつながりを大切にする。
本紙では10月31日、緑区西橋本にある同社ビルで松井さんに話を聞いた。
―中学生で理科部、高校は生物部だった
「人間の色々な物事は自然科学とは切っても切り離せない。コンクリートに囲まれた暮らしをしていると人間の本質が失われていく。幸い私は自然の中のどまんなかで育った。『この花は隣の花と同じ種類なのにどうして違う咲き方をするのだろう?なぜ春になると花が咲くのだろう?』と世の中の不思議なことに色々と考えるうちに、ひらめきや気づきが育っていった」
―相模原市で創業し、現在はみなとみらい21地区(横浜市西区)に本社を構える。相模原市では2021年から市長へ助言などをする市の参与を委嘱している。
「株式会社は会社法によってできている。会社法に従ったら、株主が会社の一番大事な立場。そして株主に選ばれた人が取締役になる。その基本がなくなったらダメ。かつて代表取締役を務めた市の第3セクターは設立して3年で黒字化、少なくともトントンまで持っていこうとした。第3セクターだから行政がついているとかそんな甘い考えではだめ。市の職員にも徹底して経営を叩き込まなければならない。そう考えてやっていた」
―「ものづくりの街」と言われた相模原市だが現在は市内のいたるところに大型物流施設が現れ、「物流の街」に変わりつつある。
「相模原はかつて広い土地があり、国道16号ができて企業や工場が集まった。それが最近、大きな工場は出ていってしまい、産業の街というより、住宅都市になった。行政は企業誘致に力を入れているが『人さらい、企業さらい』をするようではだめ。会社が来たくなるような街にしていかないといけない」
アルプス技研を「現在の姿」(東証プライム上場)に育てあげる一方、1990年代から起業家育成事業や企業再生を手掛けた。また青少年やその家族に自然体験の場を提供するNPO法人の設立や海外でのIT技術者、介護事業者養成などにも力を入れてきた。
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