さがみはら緑区 経済
公開日:2025.08.03
相模原市の米穀店が語る米流通の現状と政府備蓄米の舞台裏
市場価格の変動、米を取り巻く環境の変化
小泉進次郎氏が5月21日に農林水産大臣に就任して以来、新農相は高騰する米価格対策として政府備蓄米の放出を行ってきた。地域に根差して長年米を販売する「株式会社ちから米穀」(相模原市中央区矢部)代表取締役の山下力さんに政府備蓄米の放出後の現状について話を聞いた。
政府備蓄米の流通の課題
備蓄米の流通が遅れた原因について山下さんは「取引が10トンから12トンの大型トラック単位に限定されて、小規模米店は単独での購入が困難だったこと。政府から管理を委託された事業者側が米の品質確認(メッシュチェック)に時間を要したこと」と分析。同店でも5月30日に備蓄米購入の申請を行ったにもかかわらず、実際に米が入荷したのは7月に入ってからだった。
米価変動と米店の苦悩
7月28日に農林水産省が発表したデータによると、全国のスーパーでの米の平均価格は、前週比で4円安の3,585円(5kg)。これは9週連続の下落で、集計開始以来初めてとなる。
ただし、銘柄米の平均販売価格は前週比3円高の4,264円(5kg)で、3月上旬以降4,000円を切っていない。
今回同店に入荷した備蓄米は2021年産の古古古米で、主に業務用に使われる品質の高い「硬質米」。栃木県産の「あさひの夢」で、「状態も非常に良い」と山下さん。同店では5kg1,900円、10kg3,600円、30kg1万円(すべて税込)で販売している。
山下さんは「備蓄米が放出されてから仕入れ価格は以前の1俵(60kg)あたり5万円から3万5,000円前後に下落した」と話す。「でも安くなったからといって、すぐに販売価格に反映できるわけではない」という。米穀店には年間を通じた安定供給の責任があり、高騰前から在庫を確保しているためだ。また、生産者との長年の信頼関係により買い付けているため、「急な市場価格下落に合わせた販売価格変更は難しい」と説明する。
今年の新米は
山下さんによると、8月から早生品種の新米が収穫され始めるが、今後米業界はどうなっていくのだろうか。
「酷暑と水不足で収穫量の増加は見込めないのではないか」と山下さんは厳しい予測をした一方、暑さに強く収量も確保できる「高温耐性品種」の開発が進んでいるとも明かす。
天候や構造の変化がもたらす影響
全国的な気温上昇の影響で「コシヒカリの主要産地が西日本から東北・北海道へとシフトしている」とも指摘。北海道ではかつて加工用米が主だったが「ゆめぴりか」といった高品質銘柄米が作られるようになり人気を集めている。
「飼料米から主食用米への転換を進める生産者が増加していて、国産米の作付量は今後増えていく可能性も高い」という予測も。
JA(農業協同組合)は生産者を支える一方で、資材の高値販売や契約の制約といった課題も指摘されているが、山下さんは「近年、若い世代の生産者がJAに頼らず、自ら販路を開拓し独自の経営システムを構築する動きも出てきている」と話す。
米を取り巻く環境は変化し、大きな転換点を迎えているようだ。
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- ちから米穀(外部サイト)
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