さがみはら緑区 社会
公開日:2025.12.25
ワカサギ「ふ化放流」正念場へ
津久井湖遊船協会 対策へ「やるしかない」
津久井湖でワカサギが釣れない―。津久井湖周辺のボート店で組織される津久井湖遊船協会(井草武夫会長)が、観光振興のために津久井湖で放流しているワカサギ。近年は釣り人が絶えなかったが、昨年からワカサギの気配が無くなった。今年も釣れる様子はなく、井草会長はこの状況に頭を悩ませている。
井草会長によると、1965年に城山ダムができると71年に津久井湖でのボート営業が解禁された。その後しばらくして「観光振興のために」とワカサギを放流したのが始まりという。2000年代になり、協会の中でワカサギの放流に力を入れようと井草会長が提案。芦ノ湖のふ化放流を視察し、見よう見まねでふ化装置を制作。トライ&エラーを繰り返した末にふ化には成功したものの、稚魚を放流しても一向にワカサギは増えなかった。さらに試行錯誤を重ねると「稚魚のエサ」に注目するようになり、周辺のプランクトン調査を依頼。名手橋付近にこれまでの放流ポイントの約300倍のプランクトンがいることが分かり、そこで稚魚を放流すると一気に津久井湖にワカサギが現れるようになった。
1日に1500匹
16年頃には自家産卵で1億粒の稚魚を放流できるようになり、津久井湖はワカサギ釣りの絶好のスポットとなった。「多い日には1日で1500匹釣る人もいたよ」と井草会長。ふ化放流の完成形を迎え、この状況が続くと思われたが、状況が一変したのは昨年。「急に釣れなくなった」と井草会長は振り返る。
調べたところ昨今の温暖化が原因だと推測。「稚魚は水温が17・5度を超えると死んでしまうため水温が高すぎたのでは」と考えた。そのため、今年は水温が低い下流に放流した。しかし、最盛期の釣果には程遠い結果に。現状もワカサギはほぼ見られない。
また、城山ダムの発電による津久井湖の水位の変動も懸念する。城山ダムは津久井湖の水を城山湖へくみ上げる発電方式を取っており、「その影響で津久井湖の水位は最大で1・7メートルも変動する」と言う。水位の変動で毎年行っている親魚の捕獲が難しくなり、捕獲数の減少が産卵数にも影響している。
2年連続のこの状況に来年に掛ける思いは強い。しかし原因の予測は立っているものの、対策ができていないため頭を悩ませる。「1年に1回しかチャンスがないので失敗したらその1年は棒に振ってしまう。これまでも失敗からの経験を生かしてここまで来た」と話す。毎年2月15日から親魚の捕獲が始まるため、そこまでには対策を決める必要がある。井草会長は「課題である水温をどうするのか。みんなと考えてやってみるしかない」と力強く話す。
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