「茅の輪くぐり」とは各地の神社などで夏越祓、6月の大祓などと呼ばれる神事。茅(ちがや)の細長い葉と茎を使用して大きな輪を作り、その輪をくぐることで心身を清め、無病息災や疫病退散を願う儀式のこと。鶴川の閑静な住宅地の一角にある住宅に突如「茅の輪」が登場し、近隣の住民らを驚かせた。
茅の輪が設置されたのは自宅で茶道を稽古している裏千家・澤井宗陽師範の門先。澤井師範は「どうしても茅の輪が作りたくて」と日ごろ庭の整備を行う職人に頼んで茅を取り寄せたという。そんな茅の輪のある稽古場で澤井師範は5月18日、新型コロナウイルス退散を願って特別な茶席を設けた。「待ちに待ったワクチン接種が始まって、夏越祓の取り合わせがピッタリだと思って」
町田茶道会に所属している澤井師範。6月に担当する予定だった月例茶会が感染拡大防止の観点から中止に。「こんな状況だから仕方ないのだけれど。大人数は無理なのでうちでなら」と説明。
伝承を止めない
茶道の歴史をひも解くと、平安時代から貴族に親しまれ、応仁の乱や千利休の切腹、戦争などいろいろな存続の危機を乗り越えて、形を変えながら今に至っている。澤井師範は「私たちの代で止めてはいけない。コロナも乗り越えて新しい形で伝承しないと」と話す。
床には「清流無間断」(鵬雲斎大宗匠筆一行)の掛け軸が掛けられた。紫陽花が活けられた花入れは釣り船型。清流のしぶきが描かれた鶴首釜や青海波の水指、根来船頭の薄器など、部屋そのものやそれぞれの茶器にコロナを流してしまいたいという一貫した思いが託されていた。弟子が点てた抹茶は客に出さず、床に供えられた。客には持ち帰り用に新茶と袋入りのお菓子が渡された。
澤井師範から茶器などの説明を聞きながら、客はお茶の匂いや道具の数々を堪能し、その背景に思いをはせていた。
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