「ニュー八」の愛称で親しまれる横山町の映画館「ニュー八王子シネマ」が来年1月31日(火)をもって閉館となる。同館が3〜5階に入居する7階建てビルの耐震改修工事が行われるため。運営するニュー八王子ビル(株)が発表した。市内唯一の「既存館」が70年の歴史に幕を閉じる。
「ニュー八王子」という劇場名は1947年(昭和22)に登場した。当時運営をしていたのはタツミ映画興行(現・シネマシティ株式会社=立川市)。1964年に現在のビルが建てられた。映画館は4階のみでスクリーンは1つだった。
1992年、ニュー八社が運営を引き継ぐと2000年代にかけ3、5階に増設し現在と同じ「4つのスクリーン」(1〜4号館)を有する形になった。「シネマコンプレックスが登場し『ひとつの場所(映画館)でひとつの映画』という時代でなくなった。対応するよう増やしていきました」と中島幹和支配人は説明する。
資料によると、1950年代(昭和30年前後)、八王子駅周辺には同館を含め「東宝映画劇場」(本町)、「八光館」(八幡町)など6つの映画館があった。しかし映画文化の斜陽とともに80年代から閉館するところがでてきた。
映画館が淘汰されていく中、同館は「スクリーンが多く上映作品が豊富」などで人気を集めた。子ども向けの映画では封切り前に行列する光景もみられた。「近隣で映画館があったのは立川。なので山梨県から訪れる人も多かった」と中島さんは振り返る。90年代は年間で10万人前後の来場を記録した(現在は7万人前後)。
「覚えておいて」
大手企業によるシネコンに対し地元の興行者による映画館は「既存館」と呼ばれる。比較されることについて中島さんは「どちらかにこだわらず単純に面白いと思った方に行けばいい」と語る。「全席指定のシネコンは便利で安心。自由席の所(既存館)は実際劇場にいって席を選ぶ楽しみもある。レトロな雰囲気を味わいたければうちみたいな所がいいのでは」
市内唯一の既存館閉館の知らせはSNS等で拡散され、同館には様々なメッセージが届いているという。近隣に住む男性(49歳)は「はじめて一人で映画を観た思い出の場所。『スターウォーズ』も『ロッキー』もここで出あった。今でも月に一度は足を運んでいる。ニュー八は八王子の映画文化、サブカルチャーを支える熱源」と惜しんだ。中島さんは「思い出がある人は最後にもう一度来てもらいたい。まだの人は一度来てこの映画館のことを覚えておいてもらいたい」と笑顔で話した。
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