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公開日:2026.01.01
高峰K2から八王子へ
市内在住の写真家 小松さん
市内在住の写真家・小松由佳さん(43)が昨年11月、ノンフィクション『シリアの家族』を集英社から出版した。写真家として精力的に活動する一方で、「アルプスの少女ハイジ」のような暮らしをしたい、と25歳から5年ほど磯沼牧場(小比企町)でアルバイトをしていた小松さん。シリア人の夫への思いや現在の住まい・八王子について、インタビューを行った。
小松さんは、ドキュメンタリー写真家として活動する中で、2008年から中東シリアを取材。現地で出会ったシリア人男性・ラドワンさんと13年に結婚している。
今作では、シリア内戦で難民となったラドワンさん一家を襲った非情な運命や、現地で自身が体験し、感じたことだけでなく、24年12月にアサド政権が崩壊した直後に家族でシリアを訪れた際に目にしたことが克明に書かれている。
今作は、第23回開高健ノンフィクション賞の受賞作でもある。「受賞自体が光栄だが、5年に及ぶ取材が作品として形にできることや、(受賞したということは)本になる、本にできるんだということがうれしかった」と喜びを語った。
大学時代の挑戦頂上 目指し
夫のラドワンさんと共に、シリア情勢のリアルを発信し続ける小松さんだが、実は23歳の時、世界第2位の高峰「K2」(8611m)の登頂に日本人女性として初めて成功した人物でもある。
K2は、パキスタンのギルギット・バルティスタン州と、中華人民共和国のウイグル自治区との国境に位置する。測量したインド測量局がカラコルム山脈で2番目に測ったことから「カラコルム第2号」、つまり「K2」と呼ばれるように。一説には、「登頂難易度はエベレストをはるかにしのぐ」とも言われている。
小松さんは、高校の登山部で山登りを本格的に始め、進学した東海大学でも山岳部に所属。部員間でもK2は憧れの山だった。その矢先、同大学の創立50周年記念事業として経済的な面も含めた支援を受けられることになり、K2遠征計画が実現に至った。6人の登山メンバーで向かったが、1カ月半ほどの行程は過酷を極め、最終的に登頂できたのは小松さんを含め二人だけだった。
「K2は標高の高さや急峻な地形、岩の脆さなど、不確定要素の大きな山で、死亡する確率も高い。自分ももしかしたら帰れないかもしれないと思い、遺書を書いてから登った」と並々ならぬ覚悟だった当時を振り返る小松さん。この偉業が評価され、登頂の翌年、植村直己冒険賞が贈られている。
「ハイジ」憧れ 磯沼牧場へ
そののち、心境の変化が訪れた小松さん。
頂上からの景色ではなく、山の麓の暮らしや景色に興味が広がり、モンゴルの草原や中東の砂漠を旅し、現地の暮らしを写真に収めるようになった。
さらに旅先だけでなく、私生活も「アルプスの少女ハイジ」のような、自然に囲まれた暮らしをしたい、と思い始めた。当時も都内で暮らしていたが、よりハイジの暮らしに近いような環境を探して見つけたのが、磯沼牧場だった。さっそく牧場でのアルバイトを始め、早朝の牛の世話にも間に合うように、牧場の近くに引っ越した。
自由な働き方「認めてくれ感謝」
牧場側は小松さんの写真家を目指した活動に理解を示し、「2、3カ月間海外に取材に行った後でも働かせてもらった。自由な働き方を許容してくれて感謝している」と切々と話す。
磯沼牧場の磯沼正徳代表は、20年ほど前の当時を回顧し、「撮影した写真を通じて小松さんの熱意や心意気が伝わり、働いてもらうことにした。人手不足の中で非常に助かったし、今も写真家としての活動を応援している」とエールを送った。小松さんは約5年間の牧場生活を通して、写真家としての立ち位置を明確に自覚。「自分はハイジのような暮らしをしたかったのではなく、そんな生活をする人々を取材する側でいたいんだな、ということに気づいた」と苦笑する。
シリアの人々これからも追う
次回作について、今作と変わらず「シリアを取材していきたい」と意欲を示した小松さん。「アサド政権崩壊後、難民・避難民の多くは故郷に戻っているが、生活はまだまだ不安定で、復興への道のりも遠い。そうした中で、どのように故郷を再生していくのか、その姿を追っていけたら--」
K2登頂成功で示した不屈の精神は、シリアと日本をつなぐ重要な架け橋となるに違いない。
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