JA八王子は4月から移動販売車を導入し、市内の「近くにスーパーがない」地域に出向いている。都内のJAでは初めての試みだという。地域貢献を目的としており、販売地点によってはボランティアがその取組みを支援する動きもある。
市内各所へ 団地で歓迎地場野菜など
移動販売車の名称は「旬菜号」。保冷庫を装備する1トントラックの中に農産物直売所「ふれあい市場」(大和田町)で販売している地元農家の野菜のほか、加工品や調味料を搭載し、近くにスーパーがない10の地点に出張。現在は火曜、木曜、金曜に稼働し、1日3〜4カ所を周っている。
木曜日の午前10時、料亭「なか安」(暁町)の駐車場で販売が始まると同時に常連客が集まってくる。販売員が「保証付きのスイカだよ。『何かあったら畑からいくらでも持ってくる』って農家さんも言ってるから」と地元農家の心意気をそのまま伝える声を響かせる。近くに住む加藤一正さん(95)は「リクエストにも応えてくれるし、毎週来るのを楽しみにしている」と話す。この日は頼んでいた菓子と地元野菜を購入し、販売員と世間話を楽しんだ。販売員の1人は「地元産の良さを知ってもらえるきっかけにもなる」と話す。
旬菜号はJA八王子の地域貢献事業の一環として今年4月24日から走り出した。移動販売とあって、購入者の多くは大和田の店舗に来ていない「新規客」だ。現在の売り上げは、店頭の2割程度。人件費や車両のメンテナンスを考えると赤字だという。JAの担当者は「元々、採算が取れる計算ではないので赤字は想定内」と話す。地方では移動販売車を導入しているJAもそれなりにあるというが、都内では初めて。都内2つのJAが6月と7月に視察に訪れたという。
スタートから3カ月、積み込む商品も試行錯誤を重ねている。駐車場の確保や町会・自治会の理解も必要だ。現在は週に3日稼働しているが、週4日にして1日に4カ所を周ることが目標だ。
「応援団」も活躍
金曜日に移動販売車が訪れる宝生寺団地自治会の菊田武保会長(77)は「引っ越してきた頃はみんな30代だったけど、それから40年経つからね。車を運転しない人も増えた。昔は団地の中で野菜から小物まで色んな店があったんだけどね」と話す。「団地」という名称だが、戸建のみで約750戸・2000人が暮らす。かつて存在した商店街は1軒を残して全て撤退した。坂が多く、高齢者にとってはバス停に行くのも一苦労だという。自治会で2〜3年前から移動販売車を探していたが条件が合わずにいたところ、JAの移動販売が始まって助かっているという。
移動販売車のすぐ近くには、買った商品を家に運ぶのを手伝うボランティアの車両が数台待機している。団地内の高齢者の困りごとを手伝う「頼もう会」だ。今年1月に発足し、草取りなどの要望に応じてきた。移動販売車の話を聴き、手伝うことにしたという。地元の「比較的元気な人たち」約20人が参加している。代表の浅川義江さん(68)は「移動販売が停まる場所は団地の真ん中くらいだけど、遠い人だと1キロ近くある。標高差も10数メートルほど」と買い物を支援する理由を話す。菊田会長は「移動販売車に加えて、頼もう会のおかげで効果的な支援になっている。住民からの感謝の声は多い」と話す。
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