不登校だった人や、祖国で教育が受けられなかった外国人の受け皿として教育を提供している中学校の夜間学級。市内には多摩地域唯一の夜間学級がある。「そのことを広く知ってもらい、必要な人に情報が届くようにしたい」と新たな団体が立ち上がった。
全国では34校ある中学校夜間学級(通称・夜間中学とも)は、戦後に勤労学生や家庭の事情で学校に通えなかった人のために中学校に付設された。高度経済成長期にはそういったニーズは失われたが、1990年代に入ると「不登校」が注目されるようになり、学び直しの受け皿としての役割が期待されるようになった。昨今は祖国で義務教育を受けられなかった外国人も増えている(全体の8割)。年齢構成は15〜19歳が約20%、60歳以上が27%で、他の年代より多い。
多摩地域で初めての中学校夜間学級が市立第五中学校(明神町)に開設されたのは1952年。2018年度時点で711人が卒業している。
多摩エリア唯一
「八王子の夜間中学を守り発展させる連絡会」は、明神町にある同校の夜間学級について広く知ってもらうため昨年の9月に発足した。会員は10人。元市内中学校教員で同会世話人を務める加藤千音(ちね)さん(72)は「都内には8つの中学校夜間学級がありますが、五中以外はすべて区部。多摩エリアで唯一なのに、ほとんど知られていない状況を改善したい」と話す。「夜間学級は公立中学なので、体育や音楽の授業、修学旅行などもあり、その存在は社会的意義があります」
行政でも動き
八王子市議会で18年に「同学級の一層の周知と日本語学級開設の検討を求める請願」が決議されたという。しかし、「それから2年経つが、具体的な動きがない」(加藤さん)ことから今回、連絡会を結成。「五中夜間学級の一層の周知」「日本語学級の開設」などを求めた署名活動を開始した。累計で2519筆が集まったという。
そのかいもあってか、市による募集チラシの多言語化が実現したそう。
今が山場
活動の成果が出ているが、それでも連絡会は「今こそ山場」と考えている。理由は生徒数の減少だ。現在、同学級には14人が在籍しているが、そのうち3年生が6人。この春卒業すると生徒数が一桁台にまで減ってしまう。「必要としている人に情報が届いていないのかもしれない」と加藤さん。「実際に1961年に、立川の第三中学校の夜間学級が廃止されたことがある」と危機感を抱く。
外国人との多文化共生を研究する大学講師で八王子に暮らした経験のある大重史朗さん(56)は「すぐに廃止されることはないと思うが、生徒の数によって教員の配置数も変わってくる。減れば生徒に目が届きにくくなるし、ひいては教育の質の低下につながりかねない」と危惧する。一方、「かつての市民運動のように行政と対立するのではなく、手をとりあってより良い方向に進む好例になれば」と活動に期待を寄せる。
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