家族の介護やケアを担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」(幼き介護者)が昨今社会問題となっている。八王子市では今年度より、児童虐待防止の観点から小中学校の校長への啓発を実施。その一方、市内の職能団体は今月末、ヤングケアラーをテーマとした公開講座を開催する=関連記事あり。その当事者でもあったという講座担当者は「美談で終わらせてはいけない問題」と訴える。
クラスに1人
「親の介護をこどもが担う」「障害のある兄弟の世話をする」などヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行なっている子ども」(厚生労働省HPより)のこと。子どもが負担を強いられることで、学業や部活、友人との交流など「成長の機会」を奪われてしまう点が社会問題となっている。また、進学や就職へ影響を及ぼすことも少なくないそう。今年3月にあった同省の調査で「だいたい1クラスに1、2人はヤングケアラーに該当する」という推計が発表された。
「このような話は以前からあったと思います。ただ、それまでは美談として片付けられていました」。今回公開講座を開く八王子社会福祉士会の会員で、自身がかつてヤングケアラーだったという社会福祉士の村下佳秀さん(43)は説明する。
両親が聴覚障害
村下さんは両親が聴覚障害者で、幼い頃からよく手話通訳などを頼まれていたそう。村下さんのように「聞こえない親のもとで育つ、聞こえる子ども」をコーダという。
自宅にかかってくる電話はすべて村下さんが対応していた。ただ思春期になるとそれが「嫌で仕方なく」なり親に反抗し、揉め事になったこともしばしば。その一方で親の頼みを断ると「障害者を理解していない」と言われ、そのことに対して常に罪悪感を抱いていた。「否応なく通訳をしなければならない状況でした」と当時を振り返る。自身の経験を踏まえ村下さんは「コーダの中にはもちろん手話が好き、聴覚障害者が好きという子もおりますが、なかにはそうでない子もいます。どのような場合も押し付けはせず、その子の思いを尊重して欲しい」と訴える。
八王子市では子ども家庭支援センター(東町)で児童虐待防止の観点からネグレクト等に陥るのを関係機関との連携を活用して防止し家庭を支援している。ヤングケアラーと思われる児童についてはネグレクト等にあたるものと対応してきており、今年度からは小中学校の校長へリーフレットによる啓発や関係機関への周知を図っている。
本音話せるよう
障害のある親の介護を子どもが担うということは一見、「面倒を見て偉い」となる。それに対し村下さんはこう説明する。「はたから見れば美談かもしれません。ただ、当事者としては遊びたい、勉強したい、という思いもあるはず。親を手伝いたいという気持ちがあれば、大切にしてほしいと思いますが、それで全てを美談で終わらせるのではく、子どもが安心してそのような本音を話せる環境を作り、大変な部分は『大人』(制度など)が引き受けていくべきだと思います」
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