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川口地区 もう一度 麦畑を 経営者ら かつての種栽培

社会

掲載号:2022年1月20日号

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上川町の畑で苗の手入れをする登坂さん(右)と高野さん
上川町の畑で苗の手入れをする登坂さん(右)と高野さん

 かつて川口地区で栽培されていた「宗兵衛裸麦(そうべえはだかむぎ)」と言われる裸麦の一種を再び育て、「地域に麦畑を広げよう」とする取り組みが行われている。同町で在宅支援事業などを営む登坂(とさか)信美さん(51)らが一昨年から栽培を始め昨年、およそ70kgを収穫。ほんの一握り残っていた種からの「まちおこし」に夢を膨らます。

地域で生まれた「宗兵衛裸麦」一面そうだった

 登坂さんは2015年、育った町である川口町で起業をし在宅支援事業、就労支援事業を展開する中で、周辺で障害を持つスタッフ、支援員とともに畑を耕すようになった。以前働いていた福祉施設で農業に携わったこと、また、障害を持つ人は「地域の中で働くことが理想」と考えていたことがその理由だ。

 地元で就農者となった登坂さんは5年ほど前、地域で環境問題に取り組む高野重春さん(73/川口町在住)に出会った。高野さんはその頃、かつて川口地区で栽培されていた「裸麦」の再生を考えていた。「子どもの時はこの辺は一面の麦畑で、ひばりもたくさん飛んでいた。あの様子はこの町の原風景」。高野さんが当時見た麦畑で作られていたのは「宗兵衛裸麦」と言われるもの。高野さんは15年、JA東京中央会が認定する江戸東京野菜に川口エンドウが加わったことを受け、「それなら裸麦も」と力を入れるようになったそう。

 同会の資料によると宗兵衛裸麦は、1853年に下川口村堀口で生まれた河井宗兵衛さんが関東の気候でも栽培できるようにと品種改良し4年の歳月をかけ生み出したという。麦が主食であった明治時代、川口地区の多くの畑で栽培されていた。

5年かけ種増やす

 高野さんは知人と「再生」の取り組みを始めることにした。ただ当時、川口地区で宗兵衛裸麦を栽培している農家はいなかった。種を持つ人を見つけることもできなかった。資料によると東京での宗兵衛裸麦の栽培はピークが1950年(昭和25)の392ha。その後、日本人の食生活の変化などとともに需要は減り続け、75年(昭和50)は0haになっている。

 それでも高野さんは探し続け2015年、茨城県の農業研究センターがその種を保管していることがわかると、知人を通じて提供してもらった。高野さんは手に入れた「一握り」28粒を同年秋、畑に蒔き翌年、無事に収穫。その後、5年かけ種を増やしてきた。

一握りからまちおこしへ

 「麦畑で広がるあの光景を再び」と取り組む中で、高野さんは登坂さんの存在が大きな力になると考えた。1ha以上の畑を持ち、スタッフもおり、何より「バイタリティ、情熱がある」。登坂さんに声をかけると20年10月、登坂さんは2升の種を蒔き本格的な栽培をスタート。21年6月に収穫した。その時の心境について登坂さんは「ワクワク」、高野さんは「ようやくここまで来た」と振り返る。

 精麦された裸麦はその後、登坂さんが経営するカフェの料理で使われているほか、ネットでも販売。一方、知人らとパンやクッキー、リゾットなどを作る試みもされた。クッキーは昨年末、市内であったイベントで提供され来場した市民に宗兵衛裸麦の存在を伝えることもできた。なお裸麦の味は「米と麦の間のよう」だそう。

体験農園、焼酎

 上川町にある登坂さんの畑では現在、寒さに耐える苗の様子が見られる。登坂さんと高野さんは春に株が伸びる姿を心待ちにしている。来月まで麦踏をし今季は100kgの収穫を計画している。「いずれ体験農園を作るのもいい。麦から焼酎も作れたら。色々夢が膨らむ」。育った町に再び麦畑が広がり、多くの人が楽しめる場所になることを願っている。

宗兵衛裸麦の押し麦(左)と脱穀した麦。いずれも高野さん提供
宗兵衛裸麦の押し麦(左)と脱穀した麦。いずれも高野さん提供
1949年(昭和24)の川口地区の様子。奥に見えるのが建設途中の川口中学校。手前に麦畑が見える=高野さん提供
1949年(昭和24)の川口地区の様子。奥に見えるのが建設途中の川口中学校。手前に麦畑が見える=高野さん提供

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