八王子 人物風土記
公開日:2026.01.29
市内唯一の養蚕農家で今年度の「蚕糸有功賞」を受賞した
長田 誠一さん
加住町在住 55歳
養蚕の伝統を次世代につなぐ
○…蚕糸絹業(さんしけんぎょう)の振興発展などに貢献した人に贈られる「蚕糸有功賞」を受賞した。伝統的な手法で蚕を育て生産した繭を製糸工場へ出荷したり、道の駅で販売。その傍らで市の文化イベントに協力したり、依頼のあった小学校で蚕の飼育や糸繰りの指導を請け負う。「八王子にはこんな技術があったんだと、子どもはもちろん大人にも伝えたい」。かつて「桑都」と呼ばれた八王子の絹産業の歴史を守り続ける。
○…加住町で代々続く養蚕農家で生まれ育った。わんぱくな少年時代を過ごし、手伝いを強要されることもなかったが「別の仕事に就いても、いつかは家を継ぐのだろう」と漠然と思っていた。その日は想像より早く訪れ、高校を卒業した1週間後に、がんを患っていた父親が急逝。決まっていた就職先に頭を下げて急きょ家業を継いだ。「体調を崩していた父は、それでもその時の蚕の世話が終わるまで入院せず働いていた。当時、繭の品評会で都知事賞に選ばれた父に代わって授賞式に慣れないスーツで出席したことをおぼえている」と振り返る。
○…母親と厳格な祖父から仕事を学び、家業を継いで36年。結婚し3人の子どもにも恵まれた。養蚕業やその伝統を伝える活動などを通じて多くの人と出会い、新たな発見があることを喜ぶ。「蚕の糸を紡ぐように、人と人を紡ぐ仕事なんだと感じる」としみじみ。
○…息抜きはプラモデルやエアガンなどのホビー。そして年末に大量に買い溜めて、少しずつ食べるという大好物の栗きんとん。「作業後の自分へのごほうび」とにっこり。25年続けている学習支援で教えてきた子どもたちから街中で声をかけられることも。「地元だと『長田っち』の呼び名が定着している」と照れくさそうに微笑んだ。
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