徒然想 連載281 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
八月の八日頃には、「立秋」になり暦の上では秋となるが、まだまだ暑い時期です。
今月は、江月(こうげつ)照らし、松風吹く、永夜(えいや)の清宵(せいしょう)、何の為す所ぞ、です。
出典は、中国、唐、永(よう)嘉玄覚(かげんかく)『証道歌(しょうどうか)』。
意は、とらわれのない自由な悟りの境地は、実に江上の月の輝きにも似て、また松の枝を吹き抜ける風のように清らかだ。なすこともない安楽な生活は、秋の夜長の清爽にもたとえられよう。それをいったいどうしようというのか、ということです。
師の証道歌は、当時、一般に流行していた歌曲の形式で、禅の深い悟りの境地を一般の人々の日常的表現をかりて、詠まれています。
仏教でいう真理とは、会者定離・愛別離苦・諸行無常などで、心の安らぎを求めることです。その最も大切な真理を修行し、体得した如来(真理の体現者)の境地に達すると、自らが完成し、結果として他者への思いやりが生まれてくると諭しています。
その境地は、江上の月を愛(め)で、涼しき松風を肌に感じ、秋の夜長の清爽さを楽しむものと同じ清々しい心境ですと、教えています。
桃蹊庵主 合掌
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