大和 コラム
公開日:2025.10.03
徒然想 連載331
花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、生きながら、死人となりてなり果てて、思いのままにするわざぞよき、です。
出典は、至道無難(しどうぶなん)の歌。『至道無難禅師法語』。
意は、生きたままで死んだ人になりきる。その上で思う存分に生きるというやり方のなんと楽しいことか、です。
この文言は師が六十八歳の時に編集した『即心記』にあり、仮名法語の一つで、仏教の真髄を一般の人々にわかりやすく説き示したものです。
この和歌は師の数多い道歌(仏教の歌)の中でも最ももてはやされたものの一つです。この歌には「常に何もおもわぬは、仏のけいこなり」という前置きがあり、何も思わずに何もかもできるのが佛ということになります。大切なのは無心になることです。
何か善いことをしたいと思うと、善い、悪いの分別(ふんべつ)心に妨げられて結局何もできなくなってしまう。自と他、善と悪というような二元を超越しなければ無心(無分別)になることはできないのです。人間として常に自分自身の生き方を問い、一歩でも半歩でも向上できるように勉めていきたいものです。
桃蹊庵主 合掌
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