徒然想 連載324 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
寒さと暖かさが交互に続き、少しずつ日も長くなり春の気配が感じられる季節です。
今月は、身死して財残る事は、智者のせざるところなり。良からぬ物蓄え置きたるもつたなく、よき物は心をとめけんとはかなし、です。出典は、鎌倉、吉田兼好著『徒然草』第百四十段。
意は、自分が死んだ後に、財宝が残るようなことは、知恵のある人はしない事。つまらぬ物を蓄えておいても見苦しいし、かと言って立派な物は、どれに執着したとしても浅はかに思われる、ということです。
師が、人間の財宝への欲心や執着を誡めた文言で、見出し文に続き、 こちたく多かる、まして口惜し。「我こそ得め」などいう者どもありて、あとに争いたる様あしと。財宝をたくさん残されたのは嫌なことだ、「自分こそが手に入れよう」などと、死後に言い争っているのは醜いものだと諭しています。
死後に誰かに残そうと心に決めたものがあるなら生存中に譲っておくべきだとも。
世捨て人兼好が説く私たちへの誡めです。日常生活に必要なもの以外余分な物は持つべきではないと。
桃蹊庵主 合掌