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厚木・愛川・清川 人物風土記

公開日:2018.06.29

厚木リコーダー・オーケストラの代表を務める
谷口 晃さん
船子在住 75歳

自分色に奏でる人生

 ○…木製のリコーダーは温度や湿度により音が変わるため、演奏前に懐に入れて温めるのだそう。さすがに背丈ほどのコントラバス・リコーダーを抱くわけにはいかないが、2年ぶりのコンサートに胸を熱くして、あす仲間とともにステージに立つ。

 ○…父が嗜んでいたマンドリン、大学時代にダンスパーティ会場で女子学生と一緒に演奏したフルート、退職後に始めて現在7本を所有するリコーダー。いつの時も、音楽が人生の傍らにあった。

 ○…戦禍と災害に追われた幼少期。名古屋の生家を空襲で失い、父の実家に疎開。そこで福井地震に見舞われた。「西の空が真っ赤に燃えていたのが、目に焼きついてね」。器用な父が釣ってきたナマズやフナが食卓に上り、自身も畑仕事を手伝った。「食べるには困らなかったけど、おいしいものはなかったなぁ」。それでも父が集めたレコードを蓄音機で聴き、本棚に並ぶ外国文学の名作に胸をときめかせ、家庭には文化の香りがあふれていた。

 ○…大学進学を機に始めた群馬での下宿生活や、選択の余地がなく反発を受けた家族同伴のアメリカ赴任など、「引っ込み思案だった」性格を、新しい環境に飛び込むことで克服してきた。アンリツ株式会社に在職中、工学博士の学位を取得。59歳で退職し研究を完遂させた、芯の強さを持つ。

 ○…音楽以外の楽しみは写真。「美しい風景写真100人展」や「秋山庄太郎『花』写真コンテスト」など、名だたるコンテストで受賞経験を持つ。「色の深みが美しく、本物に近い状態で撮れるから」フィルムカメラが相棒だ。愛車に機材を積み、時には妻と一緒に全国各地に撮影に行く。お気に入りは玉川から見る夕焼け。コンサートが無事に終わったら、お手製のピクルスと焼酎で一杯、といくのだろうか。

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