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厚木・愛川・清川 コラム

公開日:2020.06.05

祈りと誓い

 先日、扉座の稽古場がある錦糸町からバスに乗って隅田川に差し掛かった時、突然、大輪の花火を観ました。全国の花火師さんたちが示し合わせて、世界を励ますためにサプライズで打ち上げてくれたのだそうです。



 驚き、見とれ、そして涙がこぼれました。



 天を揺るがす爆音とともに、夜空を染めては、命あるもののように儚く散る光の花。



 隅田川の花火は、江戸時代、疫病と飢饉で苦しんだ吉宗の頃に、五穀豊穣、悪疫退散を祈願して上げられたことが起源だそうです。この日の花火は美しさの中に昔の人々の心に繋がる、人知を超えた自然の力への畏怖と祈りが感じられました。



 今、生きてこの光を地上から見上げられる喜びと、今は天空から見守ってくれているはずの、この世を去っていった人たちの魂に捧げる鎮魂と。



 緊急事態宣言が解除されて、ここからどう生活や経済を立て直せばよいのか、不安の闇の中を歩き出すしかない私たちです。しかしその前に、今一度、命の有り難さを噛みしめろ、お前の身替りに亡くなった人々に感謝して祈れ、と花火は教えてくれた気がします。



 生活や経済は大切だけど、それを営む人間が心の力と輝きを取り戻さなくては、この先の復興はありません。そして特別の信仰を持つ人の少ない我が国で、心を支え励ますモノは歌舞音曲、文化芸術だと私は思っています。



 この日の花火師たちのような仕事をしようと私は誓いました。

 

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