厚木・愛川・清川 人物風土記
公開日:2025.09.26
厚木市鳶尾の「もりや亭」で木の象嵌(ぞうがん)絵画を展示している
中島 貞夫さん
厚木市温水在住 74歳
不器用な職人の第二章
○…ミリ単位の木片を切り貼りし、組み合わせ一枚の作品を創り上げる「木の象嵌(ぞうがん)絵画」。厚木市文化協会美術会の会員として活動し、このほど自身初となる個展を、もりや亭で開催中だ。緻密で温かみのある作品は、訪れる人からも好評。「まさか自分が個展を開くなんて思いもしなかった」と、はにかみながらも、その表情は喜びに満ちている。
○…木の象嵌との出会いは、海上自衛官として定年を間近に控えた55歳のとき。「仕事一筋の人生だったので、何か老後に打ち込める趣味を探したい」と考えていた。旅行先の伊豆で偶然立ち寄った「森のぞうがん美術館」で、館長を務める横田克彦さんの作品に感動。「自分でも手がけてみたい」とその場で制作を体験した。「黙々とできる作業が、自分の性分に合っていると感じた」と当時を振り返る。
○…北海道旭川市の出身。「もともと、美術に興味はまったくなくて」と高校時代はパイロットを志したが、視力の問題で断念。大学で機械工学を学び、卒業後は海上自衛隊に入隊した。航空機の研究開発や整備に携わる技術畑を歩み、全国転勤も多い多忙な日々を送りながら、35年ほど前に厚木に越してきた。現在では、自宅での創作活動と同時に、本厚木駅での駐輪場管理人としても勤務している。
○…3年前に厚木市文化協会美術会へ入会したのを機に、創作活動が本格化。現在は年間5、6点のペースで、より大きな作品にも挑戦する。動きのある絵を得意とし、人物の歯一本一本まで木片を選定するなど、そのこだわりは細部に宿る。「木の温かみや木目の個性、完成した時の達成感が魅力」と、第二の人生で出会った創作活動に、「とにかく根気ですね」と笑った。
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