ひきこもり経験糧に支援活動
「本に救われた」
買い物客で賑わう上町商店街の一角にある「はるかぜ書店」。NPO法人の「アンガージュマン・よこすか」が就労支援の一環として運営している書店だ。店長を務める石井利衣子さん(33歳)が、これまでの活動の功績を讃えて昨年12月、生活クラブ生協主催の「キララ賞」を受賞した。
中学1年で不登校となり、ひきこもりだった経験を持つ。運動部での人間関係や活動になじめず、次第に同級生との距離の取り方にも思い悩む3年間だった。「当時は混乱する気持ちを消化するのが難しく、自分を守るため自問自答の日々だった」と振り返る。
幼い頃から本が好きだった。その頃出会った吉本ばななの「キッチン」には、特別な思い入れがある。天涯孤独の主人公を取り巻く、型にはまらない人間模様から未知の世界を垣間見た。本を通して新たな人間関係の築き方を知り、価値観の変化が外へ出る後押しとなった。
その後、この書店の開業を知り5年前にスタッフとなった。店長となって3年が過ぎ、今は「ひきこもり経験のある自分が表に出ることで第三者の目に触れやすくし、不登校やひきこもりの理解・肯定の機会になれば」と前に出て活動する。
店を構える商店街の繋がりも大切にする。人が行き交う場に身を置くことで自然と人とふれあう。また、周りはスタッフに対してひきこもりという視点でなく、本屋の一店員として接してくれるので、間接的な支援になるのだそうだ。
今後は「ひきこもりの理由や思い、普通でない生活の在り方をもっと許容してくれる社会にしたい」と抱負を語る。現在は、昨年4月に施行された「子ども若者育成支援推進法」を受けた市の支援協議会設置への働きかけや、不登校生徒のいる家庭に出向きカウンセリングを行う訪問相談など、寄せられるニーズに合わせて柔軟に活動している。
書店の運営や今後の生活に不安は感じるが、あまり深刻に考えないのが信条だ。「今が充実しなければ、先の充実もない。足元から一歩ずつ」と謙虚に話す顔は明日への力で満ちている。
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「ピンクリボン」チャリティー講演会4月23日 |
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