情報誌『ぴあ』の表紙絵で知られるイラストレーター 及川 正通さん 平作出身 73歳
「時代の顔」が語りかける
○…36年間描き続けた情報誌『ぴあ』の表紙イラストを集めた企画展を横須賀美術館で催す。ショートケーキを頬張るスティービーワンダー。頬にシェーバーを当てる広末涼子。咥えタバコ姿の薬師丸ひろ子等々。軽妙なタッチといたずら心で世相を衝いた独特の作風はあまりにも有名だ。今回はギネス世界記録に認定された1300点超の作品群から選りすぐりの200点を抽出。あんな時代こんな時代の空気感を浮かび上がらせる。
○…「好きなように描かせてもらったよ」と話す作品は人選から係わってきたという。反面、客観的視点にこだわるため本人には絶対に会わない。過度なパロディで出版社に迷惑を掛けることも少なくなかったが、筆をゆるめることはなかった。雑誌の発行日、編集長はネクタイ着用で待機─。真剣勝負で向き合った仕事は雑誌表紙イラストの連続制作期間で世界一となり、ギネス認定を受けた。
○…終戦後、引き揚げ船で中国・大連から横須賀に。百貨店さいか屋の「少年デザイナー求む」のフレーズに惹かれ、中学卒業と同時にデザイン課に就職した。店内POPから館内装飾、ディスプレーとなんでもこなしたことが自身の血肉になった。高いデザイン力は瞬く間に評判となり、会社には内緒の副業で当時隆盛を誇っていたどぶ板界隈のバーの看板を何軒も手掛けた。「進歩的なものを描いていたよ。残っているとすれば奇跡だね」
○…『ぴあ』の連載を終えた今、キャリアの総括として挑んでいるのは「街」をテーマにした大型イラスト。第一弾は生まれ育った横須賀を題材に選んだ。構想段階という下絵には、軍港を占拠する大型空母の甲板の上でモンローやプレスリーが歌い踊り、ラスベガス然としたどぶ板通りを銀幕スターの石原裕次郎や小林旭が闊歩していた。及川ワールド全快。「時空を超えた夢の横須賀を見せてあげるよ」
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