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横須賀・三浦 人物風土記

公開日:2015.01.16

ギャラリー時舟で今月25日(日)まで、片岡昌回顧展を行っている詩人の
池田 良さん(本名 片岡良子さん)
秋谷在住 

亡き夫に捧ぐ鎮魂詩



 ○…「君がどこかに隠れてしまってから、僕は毎日必死になって君を捜している。」―これは「ひょっこりひょうたん島」などの人形デザインを手掛けた劇人形作家で、美術家だった亡き夫・片岡昌氏(享年81歳)に捧げる”レクイエム”。一昨年、虹の向こうへ旅立った同氏が遺した作品に自身が編んだ詩をつけた。晩年、仲睦まじく暮らした横須賀で時を越えた夫婦合作の展覧会を開いている。



 ○…幼少期から読書が好きで、空想や妄想が得意な文学少女だった。頭の中であれこれと無限に広がるストーリーに身を委ね、「物思いに耽る時が一番楽しかった」と話す。詩は高校の友人の影響で創作を始め、趣味で書き溜めるようになった。社会人になってからも上司に勧められ雑誌に寄稿。評判は上々で、後に人づてに知ったことだが、詩人の宗左近氏が「自費出版で本を出したらいいのに」と評価していたほどだった。



 ○…今回展示する詩は夫に先立たれ、溢れる悲しみや喪失感、罪悪感をしたためたもの。宇宙や自然をテーマに詩を編むことが多かったが、「気が付けば毎日のように彼のことを書いていた」と真情を吐露。狂気にも似た思いをそのまま綴ることでやり場のない感情を昇華した。ある時、日本美術会の機関誌に掲載する追悼原稿依頼を受けるも、どうしても筆をとれずにいた。「詩なら思いを託せるはず…」。追悼の詩と片岡氏の作品を組み合わせた新たな創作物を生み出した。



 ○…「ひょっこりひょうたん島」の脚本に憧れ、会社を早期退職した後、人形劇団ひとみ座に入団。そこで片岡氏と出会い、結婚した。余生をのんびり過ごそうと、8年前に秋谷へ移住。自然豊かなこの地は、作品のインスピレーションの源になっている。感傷的に書き殴っていた詩も、最近になってようやく前向きになってきた。遺された作品と共に悲しみを乗り越え、これからも言霊を紡ぎながら懸命に生きる。

 

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