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横須賀・三浦 人物風土記

公開日:2018.04.20

トリオバンド「星ノ飛ブ夜」で活動中。「上々颱風」のボーカリストでもある
西川 郷子さん
平作出身

「わかりやすさ」追及しない

 ○…横須賀中央のライブハウスは見知った顔でいっぱいだった。「久しぶりに降り立った故郷は変わっているようで変わっていない」。淡々とした表情で客席に語りかけながら、多感な時代を過ごした地元の思い出を蘇らせた。琉球民謡とアジアンテイストの演奏が混然一体となった独自の音楽で人気を博した「上々颱風」は休止の状態だが、抒情的な歌詞を圧倒的な歌唱力で歌い上げるトリオバンドで精力的にアーティスト活動を続けている。

 〇…曲の中に「海辺のまち」「砂浜」「国道」といった横須賀を彷彿とさせるキーワードが登場するのは、無意識の地元愛かもしれない。独特の表現は文学的だ。病気の母を見舞った帰り道、頼りない父に手を取られながら歩いた、幼少期のえもいわれぬ不安な気持ちを「ヨコスカ」のタイトルで歌にした。イメージされる情景は夜の闇に迷い込んだ少女。父親が他界した数年前に手がけたという。すべての曲に通底する独特の世界観を理解するのは少々難しい。「わかりやすさを追及しない。伝わる人には届く」というのが流儀だ。

 〇…平和運動や市民活動に参加する一風変わった高校生だった。そうしたコミュニティの中で、あまたの表現者と出会い、音楽の道に進んでいった。「上々颱風」はカラリとした陽気なサウンドが特徴のバンドだが、自身が好むのは真逆。感情の細かい起伏を歌にしてリズムに乗せる。「今はやりたかった音楽を自由にできている」

 〇…バンド時代のヒット曲や誰もが知っているカバー曲を持ち出せば、ライブの盛り上がりは確実。だが、そうしたニーズには与しない。「みんなが好きな曲は興味がない」という天邪鬼ぶり。あくまでも自分のペースだ。

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