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阿部志郎の日々雑感 第4回「命の話」

掲載号:2018年5月28日号

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阿部志郎(91)日本の社会福祉事業者。32歳で社会福祉法人横須賀基督教社会館の館長に就任し、以後50年間、地域福祉や教育の現場で尽力。戦後社会福祉のパイオニア。
阿部志郎(91)日本の社会福祉事業者。32歳で社会福祉法人横須賀基督教社会館の館長に就任し、以後50年間、地域福祉や教育の現場で尽力。戦後社会福祉のパイオニア。

 先日、刑務所で講演を行いました。その時、受刑者らに話したことを書きます。「歳を取る」ということについての話です。

 

 神様がすべての動物の寿命を30年にしようと考えました。まず、ロバを呼んで「お前の寿命は30年だ」と言い渡すとロバは、「私たちは、毎日人間にお尻をはたかれ、もっと働け、と言われるばかり。それはつらいことです。つらいのは嫌ですから長く生きたいとは思いません」と言ました。そこで神様はロバの寿命を18年減らしてあげました。

 次に犬が来ました。「ロバには長すぎたが、お前には30年で十分だろう」と神様が言うと「いいえ。走れる間は良いんです。しかし、年を取ると道の端でウーウーとうなり声をあげるだけ。それは苦しいことなので、長生きしたくありません」。そこで、12年縮めてあげました。

 続けて猿が来ました。「お前は30年、喜んで生きるだろう」と言うと、「いいえ、私たちはしたくもない芸当を人間に仕込まれて、働かなければなりません。道化の背後にある悲しみをご理解いただきたく存じます。短ければ短いほどいいんです」と答えるので、10年減らしてあげました。

 最後に人間が来ました。人間にも同じように30年でよいか、と問うと「なんて短いのでしょう。たった30年ですか。私どもは家族を養い、家族を守るために働かなければなりません。働いている間に死んでしまうことになるので、もっとください」と言いました。「そうか。それではロバの18年をそれに足そう」「もう少しいただけませんか」「それなら、犬の12年を足してやろう」「まだ少なすぎます」「それでは猿の10年をやろう。しかし、これ以上はだめだ」

 人間は去っていきましたが、満足していませんでした。人間の寿命はこうして70年と決まりました―



 これはグリム童話の一つです。この話が描かれた時代のヨーロッパ人の寿命は、30年なのです。なのに、グリムは70年と想定しました。人間が長生きするのには動物の命をいただいて年を取ることができる、ということを物語っています。

 食事をするときに「いただきます」と言います。今は習慣で言いますよね。「いただきます」は「これから食べるぞ」という意味ではありません。それを供えてくれた両親や家族に感謝する、生産してくれた農民・漁民に感謝する、と同時に動植物の命をいただくことに対する礼儀なのです。食べ終えた後には「ごちそうさま」と言います。「ごちそうさま」というのは、走り回ってくれた人に対する感謝です。

 世界には食事をするときに様々な慣習があります。お祈りをするところ、頭をさげるところもあります。西田幾多郎という哲学者は毎日お経を読んでから食事をしたそうです。いろいろあります。だけれども「いただきます」「ごちそうさま」という言葉を持っているのは私の知る限りだと、日本だけです。先祖が、命への恐れと自然との共生を伝えてくれた言葉なのです。動植物の命をいただいて、人間の命が長らえます。それを、私どもはいつの間にか忘れてしまいました。

―次回に続く
 

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