劇場公開となる映画『教誨師』の監督・脚本を手掛けた 佐向 大さん 大津町出身 47歳
作品に通底する人間観察
○…死刑執行を待つ死刑囚と向き合う教誨師を描いた映画『教誨師』(きょうかいし)でメガホンを取った。極限状態に置かれた人の精神状態と振る舞い―。彼らの心の救済につとめる聖職者の苦悩と葛藤―。重厚な人間ドラマを密室劇の手法を用いて表現。生と死の境界を独自の視点で鋭く描いた。
○…大学生の頃に撮った処女作『夜と昼』で賞を受賞、審査委員を務めていた故大島渚氏から望外の評価を得た。本人曰く「これが勘違いの人生のはじまり」。映画会社に就職し宣伝マンを務める傍ら、脚本を書き溜めチャンスを待った。少ない制作費と演技経験ゼロの役者を集めて作品を発表。自主映画で評価を集め、映画監督としての地歩を固めていった。
○…一貫した視点は「日常の人間の営み」だ。バンド活動に明け暮れた学生時代。ライブ後は夜を徹して飲み明かすのがお決まりだったが、自身はアルコールを一切受け付けない体質。シラフの状態で仲間を眺めていると、面白いことに気づいた。「駐車車両の屋根から屋根に飛び移るなど、酔いに任せて乱暴な振る舞いをしている奴がしっかり高級車だけは外していた。なんだ、冷静じゃないかって」。徹底した人間観察。これがどの作品にも通奏低音として流れている。
○…横須賀とドブ板通りを舞台に、等身大の若者の衝動をカメラに収めた初期の作品群。年齢を重ねて当時と同じ気持ちにはなれないが、今は違った切り口で生まれ育った故郷を捉えてみたいと思っている。「日常と基地が隣り合わせの全国的に稀有な場所。艦船が海に浮かぶグレーな景色も独特」。否定でも肯定でもない市民の独自のスタンスにも”横須賀らしさ”を感じているという。「いつの日か必ず実現させたい」
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