【Web限定記事】コロナの今、その先―〈飲食・観光〉 迫られる「来店重視」からの脱却 鈴木 孝博氏(株式会社 ヤチヨ 代表取締役社長)
新型コロナウイルス感染拡大・外出自粛の影響は多分野に渡っています。「今」の動きと「これから」を各界の関係者に聞きました。
──コロナ自粛の影響で、多くの事業者が苦境に立たされています。
「厳しい状況はどの業種も同じだが、飲食・観光・宿泊分野のダメージは特に大きい。来店や営業時間を制限されることなどこれまで経験がない。横須賀市は数年前から『観光立市』を経済戦略の中心に掲げ、成果も出ていた。これが一転、観光客を集客の柱としていた中央エリア・ドブ板通りは特に深刻だ。米海軍基地の軍人・軍属にも行動制限が発令されており、影響は計り知れない」
──多くの飲食店が、店内集客を断念して、テイクアウトやデリバリーに活路を求めていますが、これらのサービスで実際はどれくらい売上を補填できるのでしょうか。
「本来であれば3月・4月は、歓送迎会のハイシーズン。飲食店関係者からは『死活問題』との悲鳴も聞かれる。 平常復帰が見通せない現状で、できることがそれしかない。レストラン・カフェ・居酒屋といった業態は、料理だけでなく場や雰囲気を提供する対価として、料金を得ている。惣菜店や弁当販売店とはそもそもの収益構造が異なる。ある意味、業種転換を迫られているような状況。店舗にもよるが、通常月の売り上げの10分の1程度ではないか。それでも収入を維持するために踏ん張っている」
──飲食店を苦しめている固定費、特に家賃が経営の重しになっているとの声を聞きます。
「横須賀市が事業者の家賃補助を早期に打ち出してくれたのは大変ありがたい。金額の多寡は別として、こうした支援策を財政状況を理由に打ち出せない地方自治体が多い。弊社の外食事業部は関東・東北圏を中心に多店舗展開しており、出店エリアごとに自治体の支援メニューなどの情報を集めているが、一律ではない。そうした中で、上地市長は事業者の痛みに寄り添う姿勢をみせてくれている。とても心強い。ただ、影響は長引く。長期的な支援を望みたい」
──苦境を打破する新しいアイデアや官民連携の動きが出てきました。
「若手経営者が横須賀発のテイクアウトデリバリー事業をスタートさせた。ここ数年、都心で急速に広まっている”現代版の出前”サービスだ。人口密度やスタッフの確保、交通事情などを理由にこのエリアでの展開は難しいとされてきたが、タクシー事業者と連携することでまずは事業化に漕ぎ着けることができた。市民が直接飲食店を支援する仕組みとして、インターネットで寄付を募るクラウドファンディング(横須賀ショップ応援団!)を仲間と共に立ち上げたが、横須賀商工会議所主体で横須賀市の支援を受けてのリスタートで進んでいる。どちらもコロナ禍の中で生まれた光明だが、横須賀の高齢者ニーズを捉えて、買い物支援を付加したデリバリーサービスへの展開や、地域の課題解決をめざすご当地クラウドファンディングの確立などに繋がれば今回の経験を活かすことができる」
──「アフターコロナ」を見据えた戦略も必要になっています。
「飲食店も観光施設もすぐに元通りの日常とはいかないだろう。『アフターコロナ』ではなく『ウィズコロナ』の発想が不可欠。利用者のニーズ変化も予想されるため、飲食店では来店重視からの脱却を目指さないといけない。店内飲食・ミールキットなどの中食・テイクアウトやデリバリーの内食と収益構造を分散化させることなどだ。これから訪れる社会の大きな変化に柔軟に対応していく姿勢が極めて大切。今は有事。高い危機感を持ち、官民連携で乗り切る必要がある」
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