あなたのエピソードでつづる―おもひでの「さいか屋横須賀店」
「チラシや包装紙で時代の考証」
三浦半島の近現代史を研究しています。資料収集で県内の古書店や骨董市をめぐっていると、さいか屋の広告チラシや包装紙、マッチ箱などを見つけることがあります。広く出回っていたものなので希少性はさほど高くありませんが、モダンなデザインや大胆な構図、レトロなフォントに当時の空気を感じることができます。私はこれを眺めて時代の考証を楽しんでいます。
軍艦のシルエットをバックに右から左に「雑賀屋呉服店」と書かれた包装紙があります。これには日本地図も描かれており、指をさしている場所が横須賀(さいか屋)です。戦前のものですが、日本における「軍都横須賀」の位置づけがはっきりと示されています。連合艦隊の入港時に、各基地の水兵がさいか屋を訪れて土産品を買い求めたことで、全国にその名が発信されたはずです。
私個人としては、「さいか屋まんじゅう」が強く印象に残っています。衣笠のおじさんの決まりの手土産がこれ。長井に暮らす小学生には”都会の味”そのものでした。おじさんの自家用車でさいか屋と水族館などの遊興施設だった三笠を訪れたことも忘れられない思い出です。
《池上在住/久保木実/72歳》
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