あなたのエピソードでつづる―おもひでの「さいか屋横須賀店」
「何でもこなした経験。キャリアの礎に」
さいか屋のデザイン課に勤務していました。入社は1955年。中学卒業時に父の会社が倒産し、就職する必要に迫られ、さいか屋の「少年デザイナ―募集!」に応募しました。大勢の生徒が受験した中で、奇跡的に私1人が選ばれました。
16歳の社員は、看板張りから館内装飾、ウインドウディスプレイとなんでもこなしました。中でも催物のポスターデザインは夢中になって取り組みました。琉球展や三笠をモチーフにした物産展の作品は特に印象に残っています。
60年代に入ると、デザインの世界は分業化が進みましたが、地方のデパートではそうはいきません。インテリアからグラフィックまで自分なりの発想と創意工夫で仕上げていきました。会社には内緒の副業で、ドブ板界隈のバーの看板デザインを手掛けたことも。この時の経験が血肉となり、後のキャリアを形づくる礎になりました。
私がさいか屋で過ごしたのは青春の最盛期。高度経済成長期でもあり、当時の百貨店は夢の詰まった宝箱のようでした。実は妻と出会ったのもココ。閉店はやっぱり寂しい。やはり横須賀にはさいか屋が無くっちゃね…。
《大和市在住/及川正通/81歳》
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