横須賀・三浦 社会
公開日:2022.01.07
いきいきシニア「元気の源」は
令和となった今もなお、昭和レトロな雰囲気を色濃く残す街・若松マーケット。三浦半島屈指の飲み屋街として知られ、近年ではご当地カクテル「横須賀ブラジャー」でその名は一躍全国区になるほど有名になった。そんな独自発展を遂げてきた街の中でも老舗として知られる「バー サタン」。その店先から若松マーケットの変遷を半世紀に渡って見守り、今もなおカウンターに立ち続けている名物"ママ"が緒方廣子さん(75)だ。
親子三代60年店繋ぐ
母が開業した1963年は東京オリンピックを目前に控え、日本中が活気に溢れていた。当時は初代"ママ"である母が着物で接客にあたり、主な客は役人や米軍基地勤務者、自衛隊員らの接待の場。観光客や女性、若者が増えた今とはだいぶ雰囲気が異なった。先代から店を20代の頃に受け継いで以来、持ち前の明るさと分け隔てなく飾らない接客で酔客の心を掴み、店を守ってきた。
夜の街に「サタン」の名で、重厚感のある店構えから少し怖さを感じるが、ドアの先では2人の"ママ"が暖かく迎えてくれる。禁煙、カラオケ無しと、若松マーケットでは異色のバーだ。カラオケ好きだったが30年ほど前に病気で耳の聞こえが悪くなったことをきっかけにマイクを撤去。気落ちする中、見舞いに来た娘の恵美さんが「私に店を手伝わせて」と直談判。一流企業の第一線に身を置き、将来を有望視されていたが、「喘息に苦しんだ私が今まで自由に生きてこられたのはお母さんのおかげ。今度は私が助ける番」。その言葉に涙を流して喜んだという。それ以来「サタンの顔」が2人になった。
85歳まではお店に
取材前、「お誕生日はいつ?」と尋ねられた。サタンではお決まりの会話だ。店内のカレンダーにはお客の名が誕生日の欄にビッチリ。「お客様のお誕生日をお聞きして、その日にお祝いの品を差し上げていたのが始まりです。『それじゃママが大変だ』とお客様たちが言って下さり、いつしか誕生日のご本人がその場のお客様にお酒やケーキを振る舞うようになったんです」。聞いただけでも常連になりたくなるエピソードだ。
賑々しい日常を襲ったのがコロナショック。10カ月も休業したのは開業以来初。緊急事態宣言解除後は徐々に店を再開。自身も喘息持ちで高齢であることから、今は顔なじみ客だけに営業を続けている。それでもカウンターに立つ理由を「母から受け継いだ仕事ですから。お店を開けるとお客様が喜んで下さり、その声を聞くのも励みになってます」。昼夜逆転の生活の中、「よく食べ、よく眠ることが特技かしら」と笑う。「85歳まではお店に立ちたい」。元気の秘訣は心身の健康からのようだ。
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