横須賀・三浦 コラム
公開日:2025.10.17
わたしのまちでいきる きょうだいの想い 編
【6】姉の言葉で融解する心「一般社団法人sukasuka-ippo代表理事 五本木愛」
この連載では、障がいを持って生まれたうららの兄、蓮から見た妹の姿やきょうだい児として感じてきたことなど、さまざまなエピソードを紹介します。
母から「兄弟ができたよ」と打ち明けられてから、少し経ったある日。近くに住む兄と姉が来て、弟か妹ができることで祝い事のように盛り上がった後、"言葉の視線"を変えたのは姉でした。
「蓮は嬉しい?」。姉は私に尋ねました。私は両親の耳には入らないだろうと思い、「嬉しくないよ、全然」と返答。驚くだろうな、いっそきっぱり叱られた方が納得できる、そんなことを考えながら姉の反応を待っていると、「まあ、そうよね。家族多いし、長男だからなぁ」。目を丸くさせている私をよそに、姉は続けました。「でもしょうがないじゃん?出来ちゃったんだし。全部を好きにならなくていいんだよ、可愛くないなって思うならそれでいい。だからとりあえず産まれてからでいいんじゃない?もしかしたらめっちゃ可愛いかもよ?」。そう言って笑いました。姉の言葉は、無理な共感や慰めではなく、私の考えを否定も肯定もしなかった。ただ起こりうる可能性の提示をしただけ。それがとても心地よく嬉しくてたまらなかったのを覚えています。
私はその日から、新たな兄弟の誕生を少しずつ心待ちにするようになりました。相変わらず「長男だから」という言葉が大嫌いだけど。でも年も離れてるし喧嘩なんてしないかもしれない。それにきっとその頃には私も少し大人になっているはず。話し合って無意味な争いはしないで、何とかしよう。そう思えていました。そんな私の想定まで辿り着かないのに。
-次回に続く
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