横須賀・三浦 コラム
公開日:2025.11.07
三郎助を追う 〜もうひとりのラストサムライ〜
第19回 文・写真 藤野浩章
「老婆心ながら申しておく。異国人との交渉には、いつも頭を柔らかくしておくことが肝心ぞ。考え方の筋道が我々とは違うからの。時には方便を用いることもためらってはならぬ」(第一章)
◇
突如目の前に姿を現した4隻の軍艦。うち2隻は蒸気船だ。すでに世界では蒸気船の時代になりつつあったのだ。
実はペリーが立案したのは、大艦隊を率いて日本へ行き、アメリカの圧倒的な軍事力を見せつけて開国を迫る作戦だった。そして白羽の矢を立てたのは東インド艦隊司令長官のオーリックだったという。しかし彼はサスケハナ号の艦長と折り合いが悪く、さらに自身に不正の疑いもあって解任されてしまう。そこでペリーの登場となったのだ。しかも、政府は大量の軍艦の派遣を見送ったため、那覇でたった4隻の艦隊を編成して江戸湾を目指すことになった。
しかし、それでも日本を驚かせるには十分な数だった。冒頭のセリフは、7年前のビッドル来航時に交渉した経験を持つ父・清司(きよし)のもの。66歳の彼は家督(かとく)を三郎助に譲っていたが、その才能は隠居を許さず、異例の再お抱えとなっていた。
まだどこの船なのか判然としないうちに、これはアメリカ船の再来であると予想した彼の言葉は、交渉の先駆者として力強いものだったろう。「方便」の件(くだり)は物語上の重要な伏線になるが、実際に父子の間でそんな作戦が立てられていたとしても不思議ではない。
父の思いも胸に、三郎助と通詞(つうじ)の堀達(たつ)之助(のすけ)は、一番船となる押送(おしょくり)船に乗り込んだ。長さ10mほどの小舟が目指したのはもちろん、目の前にそびえる巨大な黒船だ。
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