三浦版 掲載号:2018年5月11日号
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連載 第15回「琴音海岸のこと」 三浦の咄(はなし)いろいろ みうら観光ボランティアガイド 田中健介

琴音の磯
琴音の磯
 私は、毎年の年賀状に新年のあいさつと共に、短歌を添えて諸氏に送っていますが、ある年の賀状に、「海なかに琴を弾ずる岩あると伝へて名付くバス停に立つ」という、拙い短歌を記したところ、ある先輩から、「そこは何処か」との返事を戴いたことがありました。

 バス停の名称は「琴音(ことね)」です。三浦海岸駅から「剱崎方面行き」に乗って二つ目にあたります。

 『三浦古尋録』の「菊名村」の項に、次の文があります。

 「禅宗法昌寺沼間村海宝院末寺此寺正観音ノ像有(あり)行基ノ作海中出現ノ由(よし)申ス 此処(ここ)ノ浜岩井口ノ琴音ト云(いわ)ル磯有(あり)此(この)磯海中有(あっ)テ清水湧ク是(これ)ハ昔シ法昌寺ノ観音上テセ給ヒシ処(ところ)ナリト云(いう)今ニ霊水湧出(ゆうしゅつ)ス」とあります。また、乙本と言われるものには「此処(ここ)ノ浜」ナク「岩井口ノ琴音ト云(いわ)ル磯有此磯ヨリ清水湧クト云(いう)是(これ)ハ昔法昌寺ノ観音ノ上(あが)ラセ玉(たま)フ処(ところ)ナリ云(いう)」とあります。

 いずれにしても、「琴音」の磯の海中から清水が湧出している、としています。

 また、『新編相模風土記稿』の「菊名村」の条の「海」の項には、次のように記されています。

 「海、東にあり、江戸迄海上十七里(約66Km)、海岸に琴ノ音(ね)と云所あり、此地清泉(せいせん)湧出す、法昌寺本尊観音の出現せし所と云(いう)」とあります。

 『三浦半島の民話と伝説』(菊池幸彦編著)の中に次のような話が載っています。昔、菊名の領主であった人が、三浦道寸義同のお供をして、金田の山に狩り出たが、その日は獲物もなく、疲れ果てて、菊名の磯にたどりついたところ、「どこからともなく玉をころがすような、美しい琴の音が聞こえてくる。琴の音の主は、磯辺にわき出る清水の音であった。一同が琴の音に聞きほれて清水に見入っていると、そこから金色に輝く一体の観音のお姿が浮かび上がってきた。道寸以下お供の者は、アッと驚き、ひざまづいて拝み、この像をいただいてまつった。」と書かれています。

 その後、観音像は近くの法昌寺に移されたということです。

 「琴の音」を聞いた道寸一行の他に、鎌倉から三浦へ、来られた頼朝一行も、この「琴の音」を聞いたとの説もあります。

 海中に「清水」が湧出するとは、なかなか考えにくいところですが、潮がひいた折りに、磯辺に立って、じいっと耳をかたむけると、快い音(ね)を聞くことができるかもしれませんよ。一度、ゆっくりと試みてみたいものです。

(つづく)

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