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逗子・葉山 コラム

公開日:2019.09.20

有料名越トンネル【6】 ちょっと昔の逗子
通行料のアイデア突破口に
野村昇司

 児童文学作家・野村昇司さんにご協力いただき、かつての街や人々の生活を史実に基づき蘇らせます。『有料名越トンネル』シリーズは街のため、一大プロジェクトに取り組んだ明治の男たちの物語です。



田越橋渡橋梁の資料新聞記事からの発想



 そんなある日、富道は松岡家の蔵に眠っていた古文書の中に田越橋を渡る者から渡橋料を集めていたという古文書に記録を見つけました。



 トンネルを通過する者たちから通行料をいただけばなんとか解決の方策が導き出せるかもしれない。この話を安行に持ち掛けました。



 「私も考えていたところなのです」



 安行も膨大に膨れ上がっていた工事費を何とかしなければと思い悩む毎日を続けていました。ある日、積み上げてあった古い新聞の中から安行は「日本で初めての銭取りトンネル」の新聞記事の見出しを発見しました。何度も何度も読み返しました。



 そして安行も富道の家へ走りました。



 「宇津の谷峠に初めて掘ったトンネルは有料トンネルなのです。工事費用の半分以上を結社を作った七人が出資したため費用を回収するため五十年の期限で通行料を徴収する許可をもらったと言います。我々との状況は違うにしても根本的には十分参考になる。あなたの見つけた古文書の書置きと全く同じことを意味しています」



通行料の例



 「徴収した通行料で経費の不足分の支払いがすんだその日から隧道通行料を無料にするというのはどうでしょうか」



(続)

 

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