逗子の景観まちづくり瓦版 第二十号
手を動かして風景を見つめる文・絵 永橋 爲成
二十九年前、三カ月仕事を休んで、逗子でぶらぶらすることで療養したことがある。
スケッチブックを手にして、逗子四丁目の家から田越川沿いになぎさ橋に出て海岸をゆっくり往復するのを日課とした。葉山港まで足を伸ばし、バスで小坪港に出かけて歩けるまでになった。
散歩の途中、ここはと感じた所でよく腰をおろしてスケッチブックを広げて鉛筆を走らせた。
逗子は三方が緑深い丘陵に囲まれ、西に開いた富士山が望める海とまちを蛇行して流れる川がある、散歩して心身が休まるところが多いまちと思ってきた。それから二十九年、逗子のまちも景観の変化が激しく、スケッチした場所も変わってしまった所が多いのに淋しさを覚える。
しかし、路地裏や谷戸を歩くと、家の大小にかわらず、庭を路地に開き、季節を彩る草や樹を添えた素敵なたたずまいを見かける所が多い。
昔の集落が美しく見えるのは、一軒一軒建てる場合に、その地の風景を感じ、周辺におさまるように、こう建てるべきという意識が強く働いていたことによる。逗子にはこの気持ちで努力されているしつらえに接して嬉しさを覚える。
この一年間、瓦版の編集に関わる中で、同じおもいの方々に触れ、逗子は皆さんがそんな意識を共有して心地よい素敵な景観のまちづくりを進めることができるのではないかと希望を感じている。
瓦版第20号平成25年
10月7日発行より転載
|
|
|
|
|
|