五穀養蚕の生育を司る「稚産霊神(わくむすびのかみ)」をご祭神の一つに持つ、宇都母知(うつもち)神社。周辺では古くから農業が盛んに行われ、歴史を築いてきたが、機械化や近代化に伴って古い農機具や手法が姿を消しつつある。
こうした背景を危惧した名誉宮司の泊瀬川亨さん(89)は、「祖先が築いてきた農業を未来に伝えたい」と資料館の設立を訴え続けてきた。しかし、資金面の問題もあり、長年実現には至らなかったという。
昨年、泊瀬川さんの米寿(88歳)のお祝いを記念して、建設資金の寄付を申し出る人が新たにあり、主に泊瀬川さんの私財と、寄付によって念願の資料館(=写真)が誕生した。
江戸時代の調度品も
館内に奉納されているのは、蓄耕用鋤(すき)や千歯こきなどの農機具をはじめ、養蚕の糸車や糸巻き、江戸時代から伝わる箪笥や祝い用の樽、鉢、蓄音機や映写機など数百点。各家庭に呼び掛けて収集されたほか、泊瀬川さんの祖母の実家にあたる曽我家(小田原市栢山)から寄付され、建設委員らで洗浄やメンテナンスを行って展示した。「当初は、数が集まらないかもと心配していたから、これほど多く集まったことに驚いた」と泊瀬川さんは微笑む。
道具を奉納した宮治満さん(78)は、「自宅の物置では処分されてしまうかもしれないが、資料館で100年、200年と大切に受け継がれていくことが嬉しい。将来、『よくぞ貴重な資料を残してくれた』と喜ばれるはず」と語る。
一般観覧は調整中
現時点では、常時開館はしていないが、一般観覧に向けて建設委員や神社役員らによって運営方針が固められる予定。道具の解説や思い出エピソードを表示するラベルづくりや、配置整理を行っていくという。氏子総代長の長田純一さん(65)は「ボランティアによる運営によって定期的な開館を目指し、多くの人に見てもらいたい」と話している。
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