高度経済成長期に建設された大規模団地の多くは、建物の老朽化や入居者の少子高齢化が進み、居住者の独居や孤独死、子どもの見守り不足などが全国的に問題となっている。藤沢でも例外ではなく多くの団地で高齢化が進んでいるという。
こうした背景を受けて、理学療法士の菅原健介さん(36)は、市内大庭に日本初となる都市再生機構(UR)の賃貸マンションの一室を利用した介護事業所「地域の子どもとつくる 小規模多機能ホームぐるんとびー駒寄」を8月に開設した。建設費をかけて新施設を乱立するのではなく、団地の空室を活用するという「都市型」モデルは、他エリアでの広がりも含めて一役買うことが期待されている。さることながら、同所の特徴は「地域の子どもたち」とともに、介護事業所を盛り上げていこうという点にある。「国の財源が厳しくなる中、高齢化を乗り越えていくには、地域の受け皿が必要。それなら高齢者だけでなく、子どもも集まれる拠点を作ろうと思った」。
そこで目を付けたのが団地だ。身体の不自由な人でも、エレベータがある団地内ならば移動に困らないし、戸建てに一人暮らしなら団地に越してくることもできる。また、隣だけでなく、上階、下階とも新たなコミュニティを創出できる。
開所から2カ月半。「パークサイド駒寄」の612号室には、約10人の利用者が訪問・通所・宿泊などの介護サービスを受けている。また、団地を「一つの大きな家族」ととらえる同所では、入居者や学校帰りの子どもたちも受け入れ、図工や俳句、フラダンスをともに楽しむなど、多世代交流や相互の学びの場としての機能も果たす。
時には料理を持ち寄っておしゃべりに花を咲かせる独居の高齢者の居場所となり、さらに月1回は知人医師による医療相談の会場にもなる。菅原さんは「地域貢献とか大それたことではなく、みんなで健康になって医療費削減や介護予防につなげちゃおうよという感じ」と笑う。また、居住者からは「何年も住んでいるが、隣の人とは挨拶を交わす程度。顔が見えて、つながれる場ができたのは嬉しいこと」との声が上がる。
「例えば、『家具の移動を手伝って』とか『美容室の合間に子どもの面倒を見てほしい』というように、団地内のあらゆる世代が支え合うのが理想。僕が作りたいのは介護拠点ではなく、誰もが笑顔でいられるような地域づくり。介護や医療の枠を飛び越えたわくわくするようなアクションをここから起こしていきたい」
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