美しい島々を舞台に、3年に1度開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。絵画や建築、造園、音楽…の国内外の芸術家が、瀬戸内の文化と融合させたアート作品を制作、展示する。
そんな芸術祭の〔秋〕会期に、市内大庭にある「大庭園」の造景家・川口豊さん(63)と内藤香織さん(46)が、2期連続で出展する。作品は前回に引き続き、香川県本島での『シーボルトガーデン』。公開は10月8日(土)から11月6日(日)まで。無休。
シーボルトと瀬戸内
2013年秋。川口さんと内藤さんは、オランダのカリン&パットが手掛ける環境インスタレーションアート『シーボルトガーデン』のパートナーとして芸術祭に参加。
カリン&パットは、江戸時代に西洋医学の普及に努めたオランダ人医師のシーボルトと日本の関係性を映像インスタレーションと環境彫刻で表現した。それに対して、川口さんと内藤さんは、植物学者の一面も持つシーボルトが、瀬戸内の美しさとともにヨーロッパに紹介し、その後の園芸の発展に関わった日本原産の植物をテーマに作品づくり。もともとの立地や植物を生かしながら、1000坪もの敷地内の植栽や設計を手掛けた。
2期目となる今秋は、2人だけでアート空間を展開する。
「たかが草、されど草」
川口さんと内藤さんは、自らを「造景家」と称する。「庭や自然、周りの風景を取り入れた全体の空間が、私たちの作品。その土地の自然を生かすように、草木と向き合いながら、景色の中にメッセージを込めて造景している」と語る。
「瀬戸内の離島」という立地上、作品に費やせる手間や時間は、限られる。しかも相手は自然だ。「何も手を加えなければ、あっという間に草に覆われて、ただの荒地になってしまう」。定期的に実施される草刈りなどでは、地元ボランティアに助けられている一方、ジレンマやトラブルも多いという。
「他の人にとっては『ただの草』であっても、自分たちにとっては重要な役割をする草だったりする。その草も交えて景色を作っているのに、作家側が描くイメージや方向性が伝わり切らず、歯がゆい思いをすることも多い」と苦笑する。
「空気感や過程を感じて」
草花が思い思いに繁茂する6月。100種ほどの植物を植栽したり、石による造形を加えたり……。秋に向け、準備が本格化している。「私たちの作品は『これぞアート』といった分かりやすいものではないし、自然や植物と地道にこつこつ向き合っているので、簡単に『これが完成形』とは言えない。今は通過点に過ぎず、10年かけてようやくイメージした形に近づくようなもの。でも、その空気感や制作過程を楽しんでもらえれば嬉しい」
空間を提供し、新たに
2人が活動する「大庭園」は来春、植物に包まれる庭園や農園、古民家を表現の場として提供しながら、新たな活動に挑戦する。「植物や食、音楽、香り、踊り、さまざまなアーティストの表現の場となるよう手掛けていきたい」と語る。
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