江の島と遠く富士山を望む相模湾と頬を撫でる潮風。耳に届くさざ波の音が心地いい。
幼少の頃から親しみ、ブルーフラッグ認証を取得したビーチに立ち、10年越しの感慨をかみ締める。ただ、これからだ。
水質や安全性、快適性を満たしたビーチに与えられるブルーフラッグは環境保全の象徴として光が当りがちだが、可能性はそこにとどまらない。例えば経済との両立だ。
都市部にあり、環境面で恵まれてるとは言えない海が33項目の厳しい基準を満たしたことは新たなポテンシャル(潜在能力)の発掘であり、レジャーが多様化する中で観光客に向けたアピールポイントになる。
折しも世界は持続可能性を追求する「SDGs」の達成に奔走する。環境への配慮はもはや時代のニーズとも言え、片瀬西浜・鵠沼海水浴場が「選ばれる海」足り得る条件の一つだ。
また藤沢市はコロナ以前から「通年型観光」の推進に力を注ぐ。法の制約はあるが、例えば通年型の海の家を設置し、冬の美しい海を目の前にして食事やお酒を楽しむ―。そんな発想もあっていいはずだ。
あるいは、学校教育で取り入れれば子どもたちに地元の海に関心を持ってもらうきっかけになる。ブルーフラッグは毎年の更新が必要だ。基準を満たせなければ認証は取り消されてしまう。「自分たちで海を守ろう」という意識が芽生え、環境への関心や郷土愛醸成にもつながるのではないか。
ブルーフラッグは地域資源としての海の魅力を最大限活用するためのツールだ。だから多くの市民に知ってもらい、活用してもらうことで初めて真価を発揮する。
今、大きな構想を描いている。由比ガ浜海水浴場に続き、片瀬西浜・鵠沼海水浴場も認証を取得した。逗子も取得が現実味を帯び、茅ヶ崎や平塚でも模索する動きがある。
仮に湘南地域一体の海水浴場が取得すれば、これは世界に向けてプロモーションができる快挙だ。それが全国に波及すれば―。
挑戦はまだ始まったばかりだ。だが、今は確信を持って言える。信念を持って活動を続けれていれば、いずれ思いは結実すると。
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片瀬西浜・鵠沼海水浴場が国際認証「ブルーフラッグ」を取得した。その意義を、NPO法人湘南ビジョン研究所理事長の片山清宏さんの視点で読み解いた。(連載了)