湘南高校サッカー部OBでこのほどOB会が作成した記念誌を最終執筆した 植松 二郎さん 辻堂在住 74歳
あの記憶の恩返しに
○…全編書き下ろしの大仕事だった。織田作之助賞をはじめ数々の賞を受賞し、作家としてのキャリアを積んできた。このほど手掛けたのは、母校サッカー部の記念誌。膨大な資料を読み込み、実に4年の歳月をかけて100年の歴史を読み物としてまとめた。労作を手にカメラを向けられると気恥ずかしそうに微笑んだ。「手応えのある仕事ができた。学校関係者だけでなく、外部の人が面白いと思ってくれたら作家冥利に尽きる」
○…自身も部のOBで、1965年に関東大会を制したメンバーの一人。強豪・帝京を相手に金星を上げた記憶は今も鮮明だ。「他の人からしたらちっぽけな話かもしれない。でも忘れがたい思い出。チームメイトも皆そう思っていると思う」。試合の熱が、勝利の喜びが、仲間との結束がかけがえのない記憶として残った。自らの名を冠した作品として世に残ることのない記念誌の執筆を引き受けたのも、そんな体験をさせてもらった感謝の気持ちからだ。
◯…名門、進学校、文武両道。執筆にあたっては母校を賛美するイメージはあえて排した。「記念誌とはいえ身内の自慢話にならないように」。活字の向こうにいる読者が等しく楽しめるようにという作家の矜恃がにじむ。その分、フィクションに陥らないよう新聞記事や資料、会報のボツ原稿にまで目を通し、裏付けを徹底。関係者への取材も重ね、話の「生々しさ」にこだわった。
◯…元々マイナー競技に過ぎなかったサッカーがどのようにして国民的スポーツとして認知されるまでになったのか。もう一つの読みどころが当時の時代描写だ。「戦争を境に社会のあり方が変わる昭和史としての見方もできると思う。歴史の読み物としても楽しんでもらえたら」
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