「背番号1、瀬戸」。
名前が読み上げられると小さく拳を握りしめた。
選手として、優等生タイプでは決してない。中学までは万年補欠。武器と呼べるのは肩の強さくらいで、同世代でチーム一の鈍足だ。基礎練習がきつくて、逃げ出したいと泣いたこともある。
でも、努力だけは辞めなかった。背番号は、それが結実した証だ。
マウンドを踏むようになったのは1年の冬から。時折登板の機会こそあったものの、投げては四球を繰り返し自滅することも珍しくなかった。炎上ばかりするから「燃える男」。そんな風に揶揄されたこともある。
転機は今春、格下の公立校との対戦にやぶれて。「本当にこのままでいいのか」。チームメイトが不意に呟いた一言が胸に突き刺さった。自分はどうなんだ。変わらなくていいのか―。
それから野球に対する向き合い方を根本から見直した。投げ込みに加えて大嫌いだった走り込みを愚直にこなし、下半身を徹底的に鍛えこんだ。すると次第に安定感が増し、制球も定まるように。四球も格段に減り、完投できる場面も増えていった。
「あいつがここまで伸びるとは」。目を見張る成長ぶりに周囲も舌を巻く。初めて背負うエースナンバーだが、「自分が引っ張らないと」。看板投手としての自覚も芽生え始めている。
最後の夏は仲間と戦う集大成であり、野球を続けさせてくれた両親にその姿を示す舞台だ。
「自分にできることを、精一杯やりたい」。言葉に力を込めた。
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