藤沢 社会
公開日:2023.07.21
多様な学びの場、学校内に
湘南台中学校「湘中ルーム」
全国的に不登校の小中学生が増加する中、多様な学びを支える取り組みが学校現場でも始まっている。藤沢市教育委員会は今年度から、教室に通えない児童生徒が日中に別室で学ぶための支援事業を開始した。現状の予算では週4時間に限られるが、学習指導員を配置することが制度上可能になり、学校単位での支援拡大に期待が高まっている。
14日、湘南台中学校。職員室近くに設けられた別室では、元教諭の学習指導員らが見守る中、生徒らがパソコンで文章を書いたり、問題集を解いたり。合間には生徒同士の談笑にも花が咲く。
「湘中ルーム」と名付けられた自主学習用の別室。同校が教室で授業を受けることが難しい生徒のために2021年度、独自に開設した。
今年度別室を利用するのは2、3年生を中心に18人。取り組む課題は自由で、教室の授業をオンラインで受けることもできる。チャイムに合わせた区切りはあるが、登下校の時間も生徒ごとの事情に委ねている。
同校の松原保校長は「社会が多様化し、不登校の捉え方自体が変わってきている。教室に入ることは難しくても、入り口としての居場所が必要」と別室の意義を話す。昨年校長に就任し、前任が立ち上げた湘中ルームを引き継いだ。
常設型の別室は市内でも珍しく、他校から視察も訪れる。維持する難しさは人を確保できるかにあるといい、同校ではゆとりのある教員が別室の対応に当たるほか、今年度から始まった市教委の支援事業や県が配置する非常勤職員など、制度上使えるものは全て活用して常設型を実現しているという。
学校ありきでなく
「従来の『学校ありき』ではなく、学校としても捉え方を見直す必要がある」。不登校の実情を踏まえ、松原校長が提起する。
学校に通えるかそうでないか、白か黒で捉えるべきではない。生徒が抱える事情はさまざま。グレーの中にも何層もあり、そもそも色分けはできないと考えるからだ。
同校では今年度、新たな取り組みにも着手。学校の周囲にある図書館や公民館などと連携し、不登校の生徒が過ごす受け皿を提供してもらうものだ。「学校以外の場所でも社会との接点を持つことは、卒業後の引きこもりや孤立を防ぐことにもつながる」
不登校の児童生徒のサポートは、業務が多様化し多忙化が進む教員だけでは難しい。生徒一人ひとりのニーズに応えるため、「地域とつながりながら支援を続けていければ」と連携に期待する。
学校に求められることを問われると、こう返した。「一番つらいのは本人と家族。その声をしっかりと受け止めることが学校としてできる最初の入り口だと思う」
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