戻る

藤沢 社会

公開日:2023.09.29

「孫に玩具も買ってあげられぬ」被害者沈痛
「手口知っている」なぜだまされる
オレオレ・還付金・架空請求…実際の被害から教訓探る

  • 振り込め詐欺は「自分には関わりない」という心の隙をついてくる(写真はイメージ)

 振り込め詐欺の被害が後を絶たない。子どもや孫になりすましてお金をだましとる「オレオレ詐欺」など特殊詐欺の昨年の被害額は、藤沢市内だけで約1億7900万円にのぼる。県警や金融機関などが啓発活動に力を注ぎ、詐欺の存在そのものは多くの人が認知する。それでもなぜ、知るはずの詐欺にだまされてしまうのか。心の隙をつく犯人の手口を、実際に被害に遭った人の声を基に読み解く。

オレオレ詐欺

 「オレオレ詐欺」という犯罪があるのはテレビなどで知っていた。注意が必要だと感じた反面、こうも思った。電話とは言え、見ず知らずの他人と息子を間違うものなのか―。市内に暮らす80代女性は疑問を感じたものの、それ以上深くは考えなかった。

 ある日の早朝、自宅の固定電話が鳴った。

 「俺だけど」

 息子からだ。声が似ていたから思わず本人の名前を呼び掛けた。「〇〇、どうしたの?」

 「朝早くにごめん。大変なことが起きたんだ」

 聞けば、会社の取引相手から受け取った書類を入れた鞄を盗まれてしまったという。鞄には財布や携帯電話も入っていている。警察にも届け出たから、実家にも電話があるかもしれない。そんな内容だった。

 大事な書類をなくせば息子の経歴に傷がつくかもしれない。心配と不安が胸中をざわめかせた。

 しばらくすると警察官をかたる男から電話があった。「鞄は見つかりましたが、書類と携帯電話が見つかっていません」

 その後再び息子をかたる男から電話があり、警察からの連絡を伝えたところ「あの書類は取引先とお金のやり取りに必要な大事な書類だった。上司に相談していくらか補填してもらえることになったが自分の責任だ。少しでもいいから用立ててもらえないか」。

 憔悴しきった我が子の顔が見えた気がした。「助けなければ」。そう思った。

 預金を下ろすため、銀行に向かった。行員からは詐欺が流行っているからと使い道を尋ねられたが、息子のことを説明するわけにもいかない。「当面の生活資金だ」。嘘をつき、計400万円を用立てた。

 その後、最寄りから少し離れた駅に誘導され息子の部下を名乗る男に金を渡したが、詐欺だと気が付いたときには後の祭りだった。

還付金詐欺

 「給付している年金に誤差があり、2万9千円ほど還付金がある。受け取るための申請書を送付したが、提出していないようです」

 藤沢市役所保険年金課の職員を名乗る男から電話があった。昨年他界した妻の年金のこともあり、70代男性は男の言うことを鵜呑みにしてしまった。

 男は続けた。「受け付けは終了したが、今日中であれば銀行のATMで申請書を作成できる」。その後、銀行員を名乗る男から電話があり、キャッシュカードと携帯電話を持ってATMに向かうよう指示された。

 到着すると銀行員の男に電話し、指示されるままATMを操作。疑問は感じなかった。一通り終えると男はこう言った。「今の操作は失敗したので、最初からやり直してください」。もう一度操作し、この日はやり取りを終えた。

 ところが翌日、銀行員を名乗る男から電話があり、再度手続きが必要という。怪訝にも思ったが、昨日と同じATMに。この日も2度同じ操作を求められた。

 同日夕方、生活費を下ろそうと通帳を見て気が付いた。口座の残高がほとんど残っておらず、通帳を確認すると覚えのない口座に400万円送金していた。

 つつましく暮らし、こつこつと重ねた貯金だった。今、生活もままならず、孫におもちゃを買う余裕もない。だまされた自分が悪いのかもしれない。でも、悔しくて仕方がない。後悔だけが胸の中に残った。

架空請求

 「ウイルスに感染しました。マイクロソフトに問い合わせてください」

 70代男性がノートパソコンでインターネットを使用していると、画面に突然警告が表示された。鳴り響く警告音も重なり、一気に動揺が走った。「電話しないと大変なことになる」

 慌てて表示された番号に電話すると、片言の日本語を話す男が出た。「あなたのパソコンはウイルスに感染しました」。警告表示と同じ言葉を繰り返すと突然、パソコンが勝手に動き出した。「本当に感染されてしまったんだ」。そう思い込んだ。

 応対した男によると、ウイルスを除去するためにはコンビニでプリペイドカードを購入する必要があるという。指示に従いカードを購入して自宅に戻るとまたパソコンが勝手に動き出し、メモ画面にカード裏面のIDを入力するように指示された。「上手く読み取れなかったため、再度カードを購入してほしい。あなたが間違えたIDを削除するのに手数料がかかる」

 そう説明され、合計20万円ほどのカードを購入した上で相手にIDを伝えた。全て、詐欺だった。

ピックアップ

すべて見る

意見広告・議会報告

すべて見る

藤沢 ローカルニュースの新着記事

藤沢 ローカルニュースの記事を検索

コラム

コラム一覧

求人特集

  • LINE
  • X
  • Facebook
  • youtube
  • RSS