パリ・パラリンピックに出場した日本選手団が強豪国を破る快進撃を見せるなど、障害者スポーツに今注目が集まっている。五輪種目ではないものの、藤沢市内では視覚障害者向けの卓球「サウンドテーブルテニス(STT)」に熱心に取り組む人たちがいる。競技のルールや魅力に迫った。
STTはアイマスクを着用し、専用の卓球台と金属の球が入ったボールをネット下にくぐらせ、音を頼りにラリーするパラスポーツ。打球音が分かるようにラケットにラバーは貼られていない。
県STT協会の内藤雅善さんによると、昭和初期に栃木県足利盲学校の校長が感覚訓練として考案。その後、各地で競技が行われるようになったという。県内には約50人の選手がおり、市内では長後、湘南台、六会公民館、鵠沼海岸にある「太陽の家」(藤沢市心身障がい者福祉センター)で月に一度のペースで練習会が開かれている。
2日、長後公民館の体育館に松田敏さん(81・遠藤)と松井俊貴さん(62・高倉)の2人が現れた。「いきます」「はい」の合図以外は、静寂の中でプレーする選手たち。会場には、独特な緊張感が漂っていた。
俊敏な動きでボールを打ち合う松田さんは19年前、網膜剥離で両目が見えなくなったが、「家でぼけっとしていても仕方がない」と競技を始めたという。記者も体験させてもらうと、真っ直ぐ打つことすら難しく、目を開けているにもかかわらず完敗した。生まれつき視覚に障害のある対戦相手の松井さんは、全国障害者スポーツ大会の出場選手候補で、競技歴は35年。「練習した分だけ上達する。STTは生きがい」と笑みを浮かべた。
公民館では、障害の有無にかかわらず、体験者や審判を募集している。
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